ソフト開発における課題を解決していくための活動「プロセス改善」に焦点を当て、活動を継続するために必要なポイントを紹介
「改善する習慣の浸透と定着」をテーマにした第6回勉強会(補足)では、ソフトウェア開発におけるさまざまな課題・問題を解決していくための活動である“プロセス改善活動”に焦点を当てて、参加者の皆さんとディスカッションを行いました。
補足:本連載は、横河ディジタルコンピュータ主催「組込みソフト開発現場が抱える課題の解決を考える勉強会」での議論を基に、組み込みソフトウェア開発現場で抱える課題やその解決策のヒント、気付きを読者の皆さんと共有することを目的にしています。 |
これまでの勉強会で議論してきたように、ソフトウェア開発にはまだまだ改善の余地が残されています。ソフトウェアがますます肥大化して、個々の要求に応える個別生産、さらにはビジネス戦略上での制約による開発期間の短縮など、ソフトウェア開発におけるQCDの要求事項は、ますますハードルが高くなっていくことでしょう。
こうしたハードルをクリアしていくためには、何より「継続的な改善活動」が必要不可欠になります。第6回勉強会に参加した皆さんの組織では、現在、改善活動を実施しているとのことでした。今回は、そんな参加者の皆さんとともに「改善活動を継続して実施していくためには何が必要なのか、そして、そのポイント」について深掘りしてみました。
改善活動を進めていくに当たり、まずは改善の方向性を定めるために、“自分たちが良いと考える状態を明確にする”ことが重要になります。その“良いと考える状態”に近づくことが、改善活動の目的になります。ちなみに、参加者の皆さんに目的の意味合いを聞いたところ、皆さん適切に理解しているようでした。
では“目標”とは何でしょうか。“自分たちが良いと考える状態(目的)を何らかの方法で、具体的に示したもの”が目標になります。目標を設定する際は、上位にある事業目標や組織目標と関連付けて、それらの目標を達成するために改善活動としてどのように貢献できるのかを意識し、目標を設定することが必要です。それにより、上位層の方々の改善活動に対する理解(リソース)を得やすくなります。
参加者の皆さんが、どのようにして目的・目標を設定したのかを聞いてみました。
現状の不具合の発生状況を分析し、まずはその半減を目指すこととした | ||||
プロジェクトごとに納期や、顧客満足度、利益などに関して目標を設定している | ||||
あるプロジェクトで発生した問題点を、次のプロジェクトで発生させないことを目標としている | ||||
ここで挙がった意見は、何らかの改善活動を行った結果の目標になります。これは、改善活動の実施者が直接コントロールできる目標ではなく、結果的な目標です。それと併せて、自分たちが普段の活動で努力や工夫を行い、身近な目指すべき目標(コントロール可能な目標)も設定してみてください。
改善活動が進むにつれて、解決すべき問題点が詳細化されていき、その解決策も少しずつ見えてきます。それに併せて目標もブレークダウンしていき、改善活動の実施者および実際の開発者は、そのブレークダウンされた“コントロール可能な目標”の達成を目指して活動することになります。
現場視点での目標設定に関し、「数値化」「コントロール可能」という観点で、少し弱い・不得意な組織があるかと思います。そう感じている方は、以下に目標設定のポイントと簡単な例を挙げましたので、参考にしてみてください。
関係する全員が理解できる、共通の指標で分かりやすい表現にする。関係者全員が理解しているかによって、その達成率が変わってくる。
期待される成果をイメージできるように具体的に定義する。具体性があればあるほど、それを意識して効果の向上が期待できる。
改善の効果や進捗(しんちょく)を把握するために、できるだけ定量的な目標を設定する。その指標と測定方法に関しても検討する。
では目標設定に関して、「数値化」「コントロール可能」という観点で、簡単な例を挙げてみたいと思います。
【結果としての目標】
・開発コストを10%削減する
・計画と実績の乖離(かいり)を8割のプロジェクトで20%以内にする
・出荷後の製品不具合の件数を、前回のバージョンより50%削減する
・CMMIレベル3プロセスの構築を完了する【自分たちが目指す目標】
・要件変更の発生率を5%以内に抑えるために、要件定義レビューでの見逃し率を0.1%以下とする
・計画時の作業抽出漏れを10%以内にする
・実績の記録を100%実施する
この改善活動の目的・目標の設定は、非常に重要です。ほかから与えられた目的・目標ではなく、自分たちで議論し、皆の腑(ふ)に落ちる目的・目標を見いだしてください。そして、活動の途中で方向に迷ったり、道を見失ったりした場合や、建設的な意見が出てこない場合などに振り返り、それを改善活動のよりどころとしてください。
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