照明機器には、明るさなどを調節するための制御回路が必要である。LEDは、白熱電球や蛍光灯とは異なる発光原理を持つため、その制御回路もLEDの特徴に合わせて設計する必要がある。ここからは、LEDの制御回路の特徴と、車載用LEDドライバICの開発動向について紹介する。
LEDは、アノード側からカソード側に電流が流れることによって発光する。逆に、カソード側からアノード側に電流を流しても発光しない上に、一定以上の電流が流れると素子そのものが破壊してしまうこともある。このため、LEDは直流電源を使って、正しい方向に電流を流す必要がある。
また、LEDを発光させるには、LEDの順電圧(VF)よりも高い電圧を印加しなければならない。例えば、標準的な白色LEDの順電圧は3.5Vで、照明機器に用いる高輝度の白色LEDには順電圧が4Vを超えるものもある。一方、赤色LEDは1.5V程度である。印加する電圧が順電圧以上であれば、LEDに電流を流して発光させることができる。
LEDに流す電流値については、LEDの順電圧に対応する順電流(IF)の値を基準にする。また、パルス順電流(IFP)以上の電流を流した場合には素子が破壊してしまうため、電流値はパルス順電流よりも低い値になるように制御しなければならない。このため、LEDを光源に用いる機器は、ほとんどが定電流回路によって制御されている。
定電流回路は、主に3つの手法によって実現される。1つ目は、定電圧電源と、LEDに対して抵抗を直列に接続する電流制限抵抗を導入する手法である。2つ目の手法は、定電流ダイオードを用いるというものだ。そして最後の1つが、LEDを駆動させるための専用IC(LEDドライバIC)を用いる手法である。
電流制限抵抗を用いる手法と定電流ダイオードを用いる手法は、回路構成が単純であり、低コストで定電流回路を設計することができる。一方で、接続する部品が電力を消費するため回路の電力効率は高いとは言えない。また、LEDの特性が、使用する素子ごとにバラつくことも問題となる。例えば、高輝度白色LEDの製品仕様では、標準の順電圧は3.3Vとなっているものの、最大4Vに達することが明記されている。つまり、使用する個々の素子の特性に合わせて、抵抗や定電流ダイオードを選択する必要が出てくることになる。
一方、LEDドライバICは、最適な電圧をLEDに出力するためのDC-DCコンバータと定電流制御を行うための回路を集積したものなので、電源電圧の変動やLEDの特性のバラつきによる影響を受けにくい。また、PWM制御によって明るさを0〜100%まで高精度に調光できるというLEDの特徴も、LEDドライバICに集積されたPWM制御回路によって生かされることが多い。
車載用LEDドライバICの場合、自動車システムに対応するための特性や専用機能を備えている。まず、動作温度範囲や振動に対する耐久性などが、いわゆる車載グレードをクリアしている。次に、自動車の電源である鉛電池の特性に対応した電源電圧の入力範囲を持つ。自動車の鉛電池から供給される電圧は、定格では直流12Vである。しかし、実際には、鉛電池の充電容量が低いと6V程度まで下がったり、エンジンの始動時などには一時的に60V近くまで上がることがある。この広い電源電圧の変動に対応する必要がある。さらに、安全性を確保するために、アイソレータなどの保護回路やショート/オープン検知回路などを集積しているものもある。
また、DC-DCコンバータについては、使用するLEDの数によって、昇圧タイプ、降圧タイプ、昇降圧両方が可能なタイプのどれかを選択することになる。先に述べたように、自動車の電源電圧は6V程度まで下がることを考えても、順電圧が3.5Vの一般的な白色LEDを1個だけ使用する場合には、降圧タイプのDC-DCコンバータを使用できる。しかし、この白色LEDを2〜4個直列で接続する場合には昇降圧タイプを、5個以上を直列で接続する場合には昇圧タイプを使用するのが一般的である。
複数のLEDを使用するときには、それらを直列/並列どちらの方法で接続するのかも重要なポイントになる。LEDを直列で接続する場合、各LEDに流れる電流は同じ値になるので、LEDの制御回路にとって最も重要な電流制御が容易である。その一方で、直列接続したLEDの個数分(VF×個数分)以上の入力電圧が必要になる。これに対して、LEDを並列で接続する場合には、低い電圧でLEDを発光させることが可能である。だだし、LEDの特性のバラつきに合わせて、各LEDに流す電流を調節する必要が出てくる。
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