オートデスクは2010年3月25日、3次元設計ツールの「Autodesk Inventor 2011」(以下、Inventor 2011)シリーズを発表した。出荷開始は同年4月9日の予定。
今回発表の製品群のコンセプトとして掲げられたのが、「フロントローディングによる品質の作り込み」。その柱として、オートデスク 製造ソリューション本部長 大谷 修造氏は以下の3本を挙げた。
Inventor 2011ではこれらに対応するデジタルプロトタイプ(デジタル試作)関連の機能追加をメインに行った。
「従来のCADオペレーションではコマンドを選択する順番を考えてしまうものでしたが、Inventor 2011では自然な感じの操作を目指しました」(大谷氏)。同社によれば、設計者の3次元CAD操作の8割がモデリング作業そのものに費やされ、アイデア検討など創造的な活動を阻害しているという。
新たに追加した「ダイレクト マニュピュレーション」機能は、設計モデルを触ると、その個所に関連するコマンドのアイコンのみをマウスカーソルのそばにピックアップして表示してくれる。併せてマウスカーソルのそばには、寸法値入力のエリア(フィールド)も表示(ヘッズアップ機能)。スケッチをしながら、寸法記入も同時に行える。従来は、スケッチが終わった後に寸法を追加していた。
AutoCADの代表的な機能「オブジェクトスナップ」(例:円形の中心点や接線など、自動で検知して選択する)もInventorに採用し、アセンブリ作成時の作業負荷軽減も狙った。
また今回のバージョンからは検討中の形状がリアルタイムにプレビュー表示できる。2010までのバージョンでは、現状の形状と修正中の形状を重複させプレビューしていた。
ダイレクトモデリングツール「Inventor Fusion Technology Preview 3」(以下、Fusion TP3)もInventor 2011シリーズのパッケージに梱包した。このツールを利用すれば、単一モデルにおいてパラメトリックモデリング(Inventor)とダイレクトモデリング(Fusion)の相互運用が可能。Fusion TP3でモデル形状追加や削除をしても、Inventorに受け渡す際にそれらを反映できる。双方のデータ仲介にはDWGを使う。
「(CADオペレーションの負荷を減らすことで)設計の前段階で、幅広くたくさんのアイデアを検討しやすくしたいと考えました。後工程になればなるほど、制約条件が増え、アイデアにトライするチャンスが減ってしまうものです」(大谷氏)。
ビジュアライゼーション機能については、水彩風、手描き風など表現方法のバリエーションを増やした。
「製品品質の作り込みには、製品の設計製造に関係するたくさんの人たちが持つ知識および情報を取り込むことが肝心です。意図をより具体的に分かりやすく伝えるためのツールの必要性に着目し、ビジュアライゼーション機能を強化しました。モノクロの線だけでいい、あるいは色や質感、製品が置かれる場所の雰囲気までリアルに表現したい、など場面によって必要とされる表現は異なります」(大谷氏)。
今回、解析機能関連としては「シミュレーションガイド」を追加。解析をするためのワークフローのガイドを画面右の柱に表示し、解析に詳しくないユーザーの作業支援をする。この機能では、材料や拘束条件設定の仕方のほか、解析結果の見方までガイドしてくれる。
またフレーム解析の機能を追加。Inventorの「フレーム ジェネレータ」(断面とパスでフレームモデルを生成)で作成したフレームデータを解析用データに自動変換できる。3次元モデルでメッシュを切るよりも、効率的に解析処理が可能だ。同社の製造関連製品のユーザーは、産業機械分野が28%を占めていることから、フレーム解析機能のニーズは高い見込みだという。
同社ユーザーである設計者にアンケートを取ったところ、設計者(向けの)CAEの関心度は高く、特に静解析をやってみたいという要望が多かったという。また、CAE機能を搭載した製品の販売本数(国内)も着々と増えているとのことだ。
「今後は、製品の品質特性を設計で管理することがより大事になってくると考えています。それには、CAEをコンセプトの段階から使っていき、詳細設計の際の意思決定を統一していくことが重要になってきます。意思決定の根拠を明確にし、かつそれをロジカルに設計の中で表現できるのがCAEです」(大谷氏)。
同社は2007年にプラッソテック社を買収し、Inventor 2010より「3Gauthor」を統合している。
Inventor 2011と同時発売予定の解析ツール「Autodesk Algor Simulation」では、「Autodesk Inventor Professional(AIP)」のデータが再利用できる。またウィザード形式による疲労評価を追加。同社は2009年9月に「Autodesk Algor Simulation」を国内で販売開始し、同年12月には英ファティグウィザード(FatigueWizard)社の技術を買収した。同社ユーザーについては、「将来使いたい機能」として、疲労解析の注目度が高いという。
同じく同時販売のプロダクトデザイン用ソフトウェアの「Autodesk Alias Sketch 2011」は、スケッチ機能を強化した。これまでラスタデータ(点集合で画像を表現)のみを扱っていたが、今回のバージョンからベクタデータ(寸法の概念がある)を扱えるようにし、AutoCADの中にプラグインとして追加するとのことだ。
ほかに「AutoCAD Electrical 2011」「AutoCAD Mechanical」、ビジュアライゼーションツールの「Autodesk Showcase 2011」も、上記やInventor 2011と同時に販売開始する。
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