2002年の小泉首相の知財立国宣言から1年後、2003年7月に政府より発表された「知的財産の創造、保護および活用に関する推進計画(通称“知的財産推進計画”)」には「知的財産を活用して中小・ベンチャーを活性化する」という項目が盛り込まれています。その後も、毎年公表される「知的財産推進計画」では、下記の表のように国として中小・ベンチャー企業を知的財産面から支援する姿勢を強く打ち出しています。
年度 | 該当箇所 | 内容 |
---|---|---|
2004年 | 第2章−II−4 | 中小企業・ベンチャー企業の支援と啓発を強化する |
第3章−4 | 中小企業・ベンチャー企業や地域を支援する | |
2005年 | 第3章−II | 中小・ベンチャー企業を支援する |
2006年 | 第3章−III | 中小・ベンチャー企業を支援する |
2007年 | 第3章−III | 中小・ベンチャー企業を支援する |
2008年 | 重点編−I−3 | 新事業開拓の担い手として中小・ベンチャー企業を支援する |
第3章−III | 中小・ベンチャー企業を支援する | |
2009年 | II−1−2−7 | ものづくり中小企業の知的財産の創造・活用を支援する |
II−2−3−3 | 中小・ベンチャー企業による外国出願を支援する | |
II−2−3−4 | 中小・ベンチャー企業の海外への事業展開に対する支援策を拡充する | |
II−3−1−1 | ソフトパワー産業における中小企業支援策の活用を促進する | |
II−5−4 | 中小・ベンチャー企業に対する特許手数料減免制度を見直す | |
出典:知的財産推進計画 |
代表的なものでも、特許庁や工業所有権情報・研修館などを中心に以下のような「知財知識面」、「知財人材面」、「知財戦略面」でのサポート制度が準備されています。これらを活用することで、課題となっている「知識面」や「人材面」の不足を補うことを検討するのも良いでしょう。
知財戦略面においても「地域中小企業知的財産戦略支援事業」を活用することは可能ですが、戦略立案機能については自社内で構築することが重要です。前回紹介した戦略の定義
を見ると、戦略立案の上でまず欠かせないのが現在地に関する情報を収集・分析する能力です。つまり、自社を取り巻く市場の動向や競合他社の状況といった外部環境情報を収集・分析する能力・スキルです。知財戦略を立案する上では、自社事業に関連する特許・意匠・商標の検索・分析方法を習得することが重要になります。検索エンジンを使っての情報収集とは異なり、知的財産情報の検索にはちょっとしたコツがあります。次回からは自社で知財戦略を立案するために欠かせない知的財産情報検索・分析方法について解説します。
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以上で第3回は終了です、お疲れさまでした。
今回は知財戦略の実態について統計やアンケート結果を基に解説しました。これで前半3回分の知財マネジメントスキル総論編は終了です。
次回からは知財マネジメントスキル各論編へ入り、特許・意匠・商標の検索方法やパテントマップといった特許情報分析方法について解説します。
日本技術貿易株式会社 野崎 篤志(のざき あつし)
1977年新潟県生まれ。
2002年慶応義塾大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻修了(工学修士)。
2010年金沢工業大学院 工学研究科 ビジネスアーキテクト専攻修了(経営情報修士)。
現在、日本技術貿易株式会社 IP総研 マネージャー。
知的財産権のリサーチ・コンサルティングやセミナー業務に従事する傍ら、Webサイトe-Patent Map.net・e-Patent Search.netやメールマガジン「特許電子図書館を使った特許検索のコツ」を運営・発行している。
著書に『EXCELを用いたパテントマップ作成・活用ノウハウ』(技術情報協会)、『知的財産戦略教本』(部分執筆、R&Dプランニング)がある。
知財マネジメントの基礎から応用、業界動向までを網羅した「知財マネジメント」コーナーでは、知財関連の情報を集約しています。併せてご覧ください。
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