前ページで出てきたロック解除レバーの位置も、議論の対象になった。設計時は、試作2号機のように、ロック解除レバーは本体ユニットの背面左側の設置を考えていた。しかし、LCDが右に寄ることになり、背面の操作ボタンエリアを圧迫してしまうので避けたい……というデザイナーの猛反発を受けるとともに、ユーザーにとって分かりづらい位置だという意見が相次いだ。
「一眼レフカメラの場合ではたいてい、レンズ交換用のボタンが筺体前面のレンズ脇にあります。ですから、それになるべくならう形であるべきだと考えました。でも現実は、なかなかそのとおりとはいきません。3次元CADの前で、さまざまなパターンを検討しました」(篠原氏)。
このような位置検討のほか、開発チーム内で意見が割れたのは、ロック解除の動作方向であるという。つまり「引くと解除か」「押すと解除か」の話だ。あなたなら、どっちがしっくりとくるだろうか?
「引く方が取りやすいことは確かだと思います。ただ、やりやすいということは、安易にやってしまうということで、誤動作にもつながります。企画担当からは、誤動作の可能性だけは避けてくれとのリクエストがあり、あえてやりづらい方法、つまり押しながら外してもらう方式としました。それだと“外す”という意図でもって操作してもらえますし」(篠原氏)。
操作時の安心感、感触のよさの追求も怠れない。着脱の感触で一番効いていたのが、コネクタの力量だったという。この力量は決まっているものなので、メカ設計としては、そこにどれくらいの力量をどういう手段(機構)でもって加えていくか、検討を重ねるしかなかった。
コネクタの挿入手前、多少摩擦を持たせるためにバヨネットというバネが仕掛けられている。嵌合(かんごう)の爪に掛かると、ぐっと力が掛かり、コネクタに挿入される。このような機構になっているのは、挿入および抜去の際の安定感を確保するためだ。とくに抜去時、スルリと抜けてしまうと、非常に危なっかしい。そのような機構で操作の安定感を確保したものの、篠原氏はある違和感を覚えた。
「コネクタの入り始めは重いのですが、やがて、すっと軽くなり、奥へと入っていきます。そのとき、ガツッと当たる感じでした」(篠原氏)。
本体ユニットの凸とカメラユニットの穴で双方が位置を決めるようになっているが、そのカメラユニット側の穴に緩衝材を詰めることで、ガツッと当たる感じについては解消されたのだという。
「設計の終盤、力量は適切だけれど、何だか感覚的にしっくりこなかったのです」(篠原氏)。
どうも納得できない……。その理由は、なかなかつかめなかったという。企画担当からは、「高級車のドアのように、スーッと静かに、引き込まれるように入る感じ」とのリクエストで、これは確かに満たしていた。……しかし、何かが違う。「静かに入っていくのですが……ぐしゅっとした感じが、どうも気持ちが悪い」(篠原氏)。
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