“バッファ傾向グラフ”で課題を把握する過剰在庫と欠品を撲滅! TOC/S-DBR(4)(2/2 ページ)

» 2010年01月21日 00時00分 公開
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工程の中のバッファ状況を把握したらアクションを起こす

 悪い情報をただ見ているだけでは現実は何も変わりません。もしも赤オーダーが増えているならば、赤バッファ品が滞留している工程があるはずですから、それを特定して、そのオーダーが納期を守れるように、具体的なアクションを指示しなくてはなりません。

 これは、まず人員配置や作業区の変更、応援といった追加コストが掛からないものから検討し、それらができないときに残業や休日出勤をすると考えれば収益最大化の管理にもつながります。

 バッファ管理の特徴はある程度までは赤ゾーンのオーダーが増えても、納期までに手を打つ最小限の時間は残されている、いうなれば先手管理ができる点に特徴があります。

S-DBRとDBRの使い分けも必要

 しかし、特定のプロセスが、負荷オーバーとなりボトルネックになってしまった場合には、バッファ管理の仕組みだけでは対応できません。もしボトルネック工程が出現してしまえば、従来のボトルネック工程を徹底活用するDBR管理を行い、ボトルネック工程の能力に基づいて納期を設定しなければならない、ということです。

 これまでも説明したようにS-DBRでは、ボトルネック工程・設備はできるだけ発生させたくないのです。しかし状況によっては、どうしても物理的なボトルネックが発生し、従来の「ボトルネック管理」に移行しなければならない場合があります。その場合にはどこにボトルネックが発生するかを素早く突き止めなければならないのです。

 ボトルネック工程を特定する情報はバッファマネジメントから得ることができます。すなわち赤ゾーンに入ったオーダーが、一体どこのプロセスで赤になったのか、という情報を一定期間にわたり収集します(図2)。

 左のグラフは赤ゾーンに突入したオーダーの推移を週単位・工程単位にとらえたもので推移・突発性の有無などを把握することができる。右の図は一定期間の集計を基にパレート図を作成した状態。MC工程が最も流れが悪い工程であるということが分かる

図2 赤バッファ品の分析による問題工程の洗い出し例 図2 赤バッファ品の分析による問題工程の洗い出し例
左のグラフは赤ゾーンに突入したオーダーの推移を週単位・工程単位にとらえたもので推移・突発性の有無などを把握することができる。右の図は一定期間の集計を基にパレート図を作成した状態。MC工程が最も流れが悪い工程であるということが分かる

 この図から読み取れる情報は「流れを阻害している工程はここである」ということです。1つとは限りませんが、ほとんどの場合に特定少数の設備に偏ります。この情報を基に、実際に現場の担当者の声を聞きながら設備能力などを収集しましょう。そのうえで能力的に課題を抱えているのであれば、設備投資や改善などじっくり現実的にボトルネック解消のためのアクションを打っていきます。

 今回のポイントは、到着時刻(納期)を継続的に管理すれば、渋滞(過負荷)はある程度コントロールできるということです。次回は、ボトルネック工程を継続的に監視し、納期と生産性を両立させる「計画負荷」の考え方についてお話ししましょう。


筆者紹介

ゴール・システム・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
村上 悟(むらかみ さとる)

国際TOC認証機構 正式認定コンサルタント。
大手製造業にて経理、原価計算を担当、社団法人日本能率協会を経て株式会社日本能率協会マネジメントセンター分離独立に伴い移籍。1997年、TOC(Theory of Constraints)研究会を組織し、TOC研究とコンサルティングを開始する。2002年8月にゴール・システム・コンサルティング株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在、法政大学講師、日本TOC推進協議会理事長。
ゴール・システム・コンサルティング株式会社は日本最大のTOC専業コンサルティング会社。導入企業に確実に利益をもたらすコンサルティング力はゴールドラット博士より多くの絶賛を受けている。
近著に『儲かる会社のモノづくり マーケティング 売るしくみ』(中経出版)、『問題解決を「見える化」する本』(中経出版)がある。



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