プリント基板CADを使った電子工作の具体例を紹介。また、本編で紹介し切れなかった「自動ベタ」機能についても解説する。
H8マイコン道(本連載)の第1回から第5回で、H8マイコン練習基板「H8Tiny-USB」を製作しました。
今回は番外編ということで、プリント基板CADを使った電子工作の例を紹介します。また、本稿の後半では、本編では扱わなかった「自動ベタ」機能についても触れたいと思います。
日々進化を遂げているマイコン。本編ではH8マイコンを題材に解説を行っていますが、今回は番外編ということでH8以外のマイコンに注目してみたいと思います。
はじめに、画像1をご覧ください。これはルネサス テクノロジの「R8Cマイコン(以下、R8C)」です。
R8Cは8/16ビットマイコンで、H8/Tinyシリーズの次世代マイコンとして位置付けられています。名称の「R」は、ご存じのとおり、日立製作所(以下、日立)と三菱電機(以下、三菱)の半導体事業が統合し、誕生した“ルネサス テクノロジ”により世に送り出されたマイコン・チップの証です。
R8Cは、CPUコアに三菱系の「M16」アーキテクチャを用いているため、日立系のH8マイコンと命令互換はありません。しかし、チップにパワーオン・リセット、クロック発信、電源監視などの回路を内蔵しているので、周辺回路がまったくなくてもマイコンとして動作可能です。
また、命令セットを高水準言語向けに最適化しているので、Cコンパイラは非常に小サイズのコードを生成します。以上のように、R8Cは今後の進展が期待される組み込みマイコンの1つとして注目されています。
ちなみに、R8Cは秋葉原の秋月電子通商で入手できます。早速、筆者も購入してみました。以降では、R8Cを用いた電子工作の例を紹介していきます。
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画像1のとおり、R8Cのパッケージは「QFP(Quad Flat Package)」なので、変換基板などを使わないと、ユニバーサル基板による電子工作ができません。そこで、筆者はプリント基板CADを使って、本編で登場した「AKI-H8/3664タイニーマイコン」のようなマイコン・ボードを作ってみました(画像2)。
大きさは、縦・横1インチ(2.54cm)で、AKI-H8/3664タイニーマイコンと比べ、さらに小さいマイコン・ボードに仕上がりました。また、基板両端の20ピン端子にR8Cのほとんどのピンを接続してあるので、余すことなくR8Cの機能を使うことができます。いかがでしょうか。こんなボードが個人でも簡単に作れるのです。つくづく良い時代になったと思います。
画像3に「R8Cマイコン・ボード」の表面と裏面を示します。
面実装タイプの電子部品は、基板の表と裏に実装可能なので、プリント基板レイアウトの自由度が高く、そして実装密度も高くなります。R8Cマイコン・ボードでは、表面にR8Cマイコン・チップを、裏面にRS-232CドライバICを実装しました。抵抗、コンデンサなどの部品をチップ化してあるので、とても小さな基板に仕上がります。
R8Cマイコン・ボードの製作過程は以下のとおりです。
最初に回路図を設計し、回路設計CAD「CADLUS Circuit(キャドラス・サーキット)」で回路を描きます。なお、CADLUSサーキットの部品ライブラリにはR8Cマイコンが登録されていないので、自分で入力しなければなりません。
完成した回路を図1に示します。
次に、パターン設計CAD「CADLUS X(キャドラス・エックス)」でプリント基板を設計します(図2)。ICチップを中央に配置し、両側のピンとパターンを配線します。配線が交差すると、基板面を効率よく使えません。このような場合は回路図エディタに戻り、接続を変更してからネット・データを作り直します。
R8Cマイコン・ボードに5V電源を投入して、USB−シリアル変換ケーブルでノートPCと接続します。そして、PCで作ったプログラムを内蔵のフラッシュ・メモリに書込み、動作させます。
R8Cマイコン・ボードにはチップLEDを載せてあるので、画像4のように単体で動作確認ができます。
無事にR8Cマイコン・ボードが動きましたので、今度はアプリケーションを作ってみたくなりました。そこで、筆者は画像5のようなライントレース・ロボットを製作してみました。
ライントレース・ロボットは、白い床に引かれた黒い線をセンサで読み取り、その線をたどって走るロボットです。
回路はチップ部品で構成したので、画像6のように基本機能はLCDディスプレイの大きさに収まっています。
電子工作の新たな境地を求めてスタートした本連載ですが、プリント基板CADを使うとかなり製品に近いものが製作できることをお分りいただけたと思います。
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