決していいとはいえない景況だからこそ、地に足の付いた戦略づくりが重要。不安にあおられることなく、全体最適を目指す戦略づくりのヒントを紹介します。
今回は連載の第3回目として、あなたが平社員でも、末端からでも組織を動かせる方法を考えていきましょう。
さて、組織末端から全体を動かすという壮大なテーマですが、本当にそんなことが可能なのでしょうか。でも、変革を成し遂げる人物の条件は、地位や権力だけではありません。例えば、坂本龍馬は下級武士の身分に生まれながらも、自らの考え方を変革し、周りを巻き込んで天下の大事を成し遂げました。
では順番に考えていきましょう。
巻き込む相手を間違えれば、永久に事は成就しません。ですから改革を仕掛ける第一歩は、仕掛ける価値のある相手を見抜くことなのです。
こんな上司は巻き込んではいけない!
一般的に、良い上司・経営者は常に高い視点を保ち、全体のことを考えています。しかし巻き込むに足らない上司は、自己の保身、出世栄達を大事にします。
私の経験からいえば、巻き込んではいけない上司とは、主語が「私(一人称)」である上司です。成功を語るときには自分を主語にし、失敗を語るときには自分ではない誰か他人に責任を押し付ける、こんな上司には近づかない方が安全です。
巻き込むべき上司が見つかっても、何をどう話せばいいのかが分からなければどうしようもありません。そのための第一歩は、なぜ変革しなければならないのかという理由を明らかにすることです。でも、なぜ変化しなければならないか、ちゃんと言葉で説明できますか?
ここで、変革とは「ある目的を達成するために、現状を変えること」と定義しましょう。
目的を持った変化ですから、まず目的や志(こころざし)がちゃんと道理にかなったものであるか、自分勝手ではないか確認します。もしここで、志が道理にかなっていなかったり、自分の勝手な思い込みで志を立てているならば、その変革は決してうまくいきません。もう一度目的そのものを見直すことが必要です。
変革とは「痛みを伴うにしても、関係者に利益をもたらす(幸せにする)」ことでなければいけません。だから、自分だけにとらわれていてはダメですし、人を変える前に自らが変わることが必要なのです。そして、自ら変わるためには「正しい志」が必要なのです。
説得する前に、まずは以下のポイントについてしっかり答えが出せるかどうか、チェックしておくべきです。あらかじめ、こうした視点で冷静に評価して、目的に合致するかを確認しておくべきでしょう。
チェックした「変革の動機、志(こころざし)」に問題がなさそう、と確信が持てたなら、いよいよ上司を巻き込むアクションを起こす段です。でも、もう少し待ってください。
ここで陥りやすいワナについてお話ししておきましょう。
意外に思われるかも知れませんが、説得しようとする気持ちそのものが、失敗を引き起こす可能性があるのです。
前回もお話ししたように、誰も自分が悪いとは思っていません。皆さんの上司もまた同じで、むしろ上司はあなたに代わってもらいたいと思っています。ですから上司を説得して、上司に代わってもらいたいと思うそのことが大きな間違いなのです。
ここでチェックすべきは、あなたも主語が「私(一人称)」になっていませんか?
ということです。もしも主語が「私(一人称)」になっているならば、他人に責任を負わせるような人間の話(自分が代わる気がないように見える)は聞きたくないというのが上司の本音なのです。
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