新しいSolid Edgeは、2次元データにも優しくシンクロナステクノロジの新技術を実装した新しいSolid Edge

» 2009年06月29日 00時00分 公開
[小林由美,@IT MONOist]

 シーメンスPLMソフトウェアは2009年6月29日、「Solid Edge with Synchronous Technology 2(本記事中では『Solid Edge ST2』と略す)」について記者説明会を行った。なお同製品は、2009年5月26日(米国時間)に米国で先行発表している。

 同製品は、同社が2008年に発表したシンクロナステクノロジの第2世代製品。「Solid Edge」は、シーメンスPLMソフトウェアが提供する中堅規模企業向けPLMソリューション「Velocity」製品群の中心的製品だ。

 今回の発表では、2次元寸法データから3次元駆動寸法への自動変換機能、板金データ対応、SolidEdgeにおけるCAEツール統合、データ管理ツール「Insight」の「Windows SharePoint Services 3.0」対応などを紹介した。

 今回のモデリング関連の新機能は、従来のパラメトリック3次元CADでは実現が難しかったものだと同社はいう。

 Solid Edge ST2は、2次元CAD上で付加した寸法情報が3次元駆動寸法に変換できる。「AutoCAD」シリーズ、「ME10」、中間ファイル「DXF」などのデータが対応する。2次元CADで設計をしているサプライヤのデータ、過去の設計データなどの流用の際に便利だ。

 また新たに加えた「ライブ断面」表示では、各部品で設定した断面がアセンブリデータの中から編集可能だ。

変換ウィザードを使い2次元データを取り込み、高さ情報をひも付けることで3次元データ化する

 同製品の板金(シートメタル)設計機能にもシンクロナステクノロジを応用した。例えば板金の端面をドラッグして曲げや逃げを自動生成できる。板の厚みを保持したままで修正可能だ。板金設計の要素はフィーチャの「コレクション」として記録していく。フィーチャの編集を行っても再計算しなくてよく、板金の処理手順などもコレクションのリスト上の項目をドラッグすることで自由に修正できる。板金設計に関するフィーチャ(フランジやタブの形状など)そのものはそれぞれ独立していて依存関係がなく、親子関係を気にせずに修正が行える。

 また板金設計用の「ライブルール」(板厚や曲げ条件、逃げなど)を適用できる。ユーザーが予め設定した設計条件を保持したままで編集作業が行える。なお幾何拘束を付加する必要はなくなる。

 他社製品の板金設計データも板金モデルとしてインポートが可能で、ネイティブデータに近い修正が可能だ。

板金設計はパラメータ入力のほか、ドラックアンドドロップ方式でも操作可能

CAE機能 Solid Edge Simulationの搭載

 Solid Edge ST2では、SolidEdge上で使える有限要素解析(FEA)機能をオプションとして提供する(「Solid Edge Simulation」)。解析情報は上位製品であるFEAプリ・ポストプロセッサ「Femap」(フィーマップ)とも互換性を維持し、「NX Nastran」ソルバを利用する。

 同オプションでは、ほかのVelocity製品群と同様のインターフェイスデザインを採用し、新たに操作習得時間(コスト)をかけずに有限要素解析が可能だとしている。シンクロナステクノロジにより解析モデルの修正も直感的に行え、形状修正をしても解析の境界条件は維持できるという。

ミッドレンジクラスのCAEが統合され、ツールを切り替えずに解析が可能

Windows SharePoint Services 3.0ベースになったInsight

 同社は、データ管理ツールのInsightが最新のWindows SharePoint Services 3.0(以下、SharePoint 3.0)ベースとなったことも伝えた。アドオンを用いることで、Solid Edgeの3次元データを「SharePoint」上で閲覧できる。ユーザーにとって手ごろな価格でデータ管理が可能になり、Windowsベースの機能であることから、導入コストや教育コストをセーブできるとしている。

まだ設計を3次元化していない中堅規模の企業に向けて

 シンクロナステクノロジはノンヒストリベースといわれる履歴データを持たない仕組みを提供しながら、ヒストリベースの情報も並列的に扱えるようになっていることが特徴だ。利用者側の用途に応じて、それぞれの機能の利点の使い分けができる。

 時系列に沿ってモデルを積み上げていくヒストリベースでのモデリングでは、そのデータに変更が発生した際に逐一再計算を行う必要があり、データが複雑化して膨大になり、場合によっては処理に時間が掛かり過ぎるなどの問題が起こった。

 ノンヒストリベースのデータ保持であれば、こうした積み上げの情報そのものが不要になり、軽快な操作感が得られると同社はいう。かつ関連する情報を一度に変更可能なことが利点であるヒストリベースの特徴も利用した操作も可能だ。

 Solid Edge ST2を始めとするVelocity製品群は中堅規模の企業向けであり、その導入、教育および運用にかかるコストを抑えながら設計情報の3次元データ化と、文書管理を実現する製品だと同社は説明する。

 今回の発表で、シーメンスPLMソフトウェア 日本法人 マーケティング本部 本部長 庄司 良氏は、「多くのアナリストが、今後2〜3年で景気が回復するとの見通しを出しているが、そのためには、中堅企業がいかに体力を付けるかが重要となってくる。グローバルなサプライチェーンの中で、3次元デジタル化による製品ライフサイクル管理強化が重要な課題」だと語り、今後は、設計データを3次元化していない中堅規模の企業に向けて、負担の少ない3次元データ化を提案していくとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.