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» 2009年05月21日 00時00分 公開

あなたの代わりに、電子部品も3次元化しておきましたメカ設計製品/サービスレポート(1)

筐体内部のスペースがどんどん厳しくなっているいま、基板上の電子部品も3次元モデル化したい。しかし自社で用意するのも大変だ

[小林由美,@IT MONOist]

 電化製品の筐体サイズは薄小であることが望まれる一方、その中に実装される電子部品の点数や基板数はどんどん増えている。筐体の内側は、その中にある基板に配置された電子部品の角付近ギリギリを狙う。限られたスペースをやりくりするうえで、基板設計と機構設計の協調は非常に重要となる。

 機構設計は、大型産業装置など一部の業界を除けば3次元化されている場合が多いが、基板設計はいまだに2次元データである。そういった場合、どのような作業が生じるかというとが生じるかというと、基板設計側からパターン設計の線図を2次元CADの中間フォーマット「DXF」でもらい、それを手がかりにして基板外形の3次元モデルの上に電子部品の3次元モデルを1つ1つレイアウト、あるいは「IDF」にて電子部品を簡易的に表現している。

 基板上の部品点数は、小さなコンデンサ類なども含めれば、小さい基板でも数十〜数百レベルだろう。もちろん、中には同じ部品をいくつも並べる場合もあるが、それを見積もったとしても、数十種類はあることになる。それらすべての3次元モデルを用意するのは非常に手間が掛かる。電子部品のモデルは、メーカーが提供する部品のデータシートで外形寸法を確認しながら作成していく。しかしデータシートに示された外形寸法は、当然、3次元モデルを作るために用意された情報ではないので、そこから詳細で正確な形状情報は得ることができない。パッケージ外形には公差も振られず、参考寸法で示されている場合も多い。

 また、ピンの足やパッケージ上にある0.5mm程度の突起物などの干渉によって、組み立て時に問題が発生することがある。それらは目視だと非常に小さいものだが、スペースが極めて限られた設計では、こうした微小な突起物が筐体に干渉したことでショートが起こったり、筐体がかみ合わなくなったりなどの事態が起こり得る。小さな電子部品まで詳細にモデリングしなければ、実機試作に持ち込まずにデジタルデータの段階でそのような問題を洗い出すことは難しくなる。

 さらに、機構設計者が考える部品部品の原点と、電子部品に設定された部品原点は考え方が異なる場合がある。電子部品個々でも設定の仕方が微妙に異なるし、機構設計者の中でも原点設定に関する考え方が、「端面基準にするか」あるいは「外形中心にするか」など、個々で判断が異なる場合がある。電子部品を3次元モデル化する場合には、そういった原点にも気を配り、作業者同士が申し合わせなければならない。

 とにかく時間がない場合、スペースが厳しい部分や、大きい部品が載った部分に限定して簡易にモデリングし、干渉チェックを行い、あとは試作段階で洗い出してモデルへフィードバックするといったことが行われる場合が多い。

 自社独自で詳細な形状を作りこんだ電子部品の3次元モデルライブラリを作るとなると、かなりの労力となる。また量も多いうえにデータの正確性も求められる。その準備コストを想定すると、だいたい数千万〜数億円レベルになるという。

図研 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 主任 富永岳氏

 電子部品の3次元モデル化を支援しようと取り組んだのが図研の電子部品モデルのダウンロードサイト「ePartFinder」だという(図1)。同サイトは2009年4月23日にオープンした。

 「登録されている3次元モデルは、規格部品については、当社の『ePartCatalog』(有料サービス)からデータを転用してきた。*ePartCatalogのパーツにはパラメトリックが付いている  ePartCatalogのデータは、当社のポータルサイト『elecTrade』でも450万点のフットプリントのライブラリを8年ぐらいかけてためてきたので、そこのデータも有効に活用した」(同社 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 主任 富永 岳氏)。コネクタなどの異形部品については、同社と契約したデバイスメーカーより3次元モデルデータを提供してもらう形となっている。

 検索のみなら会員登録なしで行えるが、ダウンロードする際は無料の会員登録が必要だ。

図1 ePartFinderの検索画面

 検索については、「分類/メーカー」の項目を絞り込むと、「ピン数」や「ピッチ」はそのメーカーが確実に持っている種類に自動的に絞られ、選択候補となるようになっている(図2、3)。

図2 メーカー名と分類でフィルターする
図3 ピン数は、2のものしかないようだ
図研 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 チームリーダー 仲地延之氏

 3次元モデルデータは「Step」形式。パラメトリック(寸法拘束)は付いていないが、世の中に出回る3次元CADのほとんどで対応しているデータフォーマットだ。検索条件として「Multi」にチェックを入れておくと、電極とパッケージが別々にモデリングされ組み合わさったものがフィルターされる。「One」では、電極もパッケージも1つの塊として扱われたモデルとなる。

 「FTP原点あり」の3次元モデルには、2次元のフットプリントに原点として定義されうる座標に、あらかじめ点データを仕込んである。このようになっていることで、基板データを3次元化する際の部品原点合わせ込み作業の際の負荷を軽減することができるという。

 部品データはダウンロード時に圧縮梱包するので、3次元モデルデータのほか、pdfのスペックシートも同封できるようになっている。電子部品の通販サイト「チップワンストップ」とも連携する計画があり、実際の(リアルの)部品も購入できるようになる予定だという。

 部品データを提供するメーカーについては初年度が無料、2年目の年会費が12万円、3年目以降は24万円とのことだ。検索ページ内にバナー出稿することも可能だ。ただし、こちらは別途料金が発生する。

図研 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 課長 豊田真教氏

 検索結果には競合他社製品が並ぶため客を取られるリスクもあるが、逆にいえば、他社製品が検索されたときに自社の製品が表示され顧客獲得のチャンスを拡大できるというメリットと解釈もできる。「部品をライブラリにたくさん登録すれば登録するほど、検索結果で上位になるようになっている」(同社 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 チームリーダー 仲地 延之氏)。また、自社の部品を検索したユーザーの情報を得ることができる。ただしユーザーの個人名や部署名がデータとして渡ってしまうことはないので安心したい。

 現時点では、第一電子工業とタイコ エレクトロニクス アンプの2社が参入し、データ提供しているが、当然、もっと増える予定だという。機械設計者にとっては、スイッチやジャックなどの部品も欲しいところだろう。「これからも、広く部品メーカーへの呼びかけをどんどんしていく予定。近々参加するメーカーもある」(同社 営業本部 PLMサービス部 DMサービス課 課長 豊田氏)。なお、掲載されていない部品のリクエストを図研に送ることが可能なので、こちらも利用したい。

 規格部品データは約4万点あり、充実度については十分といえる。しかし参入メーカー頼みとなる異形部品の点数はまだまだ多いとはいえない状態。約1年かけて部品データとユーザーを充実させていく予定だとのことなので、今後に期待したい。

 同サイトの運営は図研側に直接的に大きな利益をもたらすわけではなく、サイトの開発・準備費用が短期間で回収できる仕組みではないようだ。「メーカーがライブラリ構築という負担から解放され、設計業務に集中できれば、日本のモノづくりはさらに発展・加速し、その結果、部品の販売増加にもつながる」(豊田氏)。同社製品「CR-5000」「V54EE」が狙う市場そのものを広げ、間接的にじわりじわり拡販効果を得たいとのことだ。

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