オートデスクは2009年3月25日、3次元CADの新製品「Autodesk Inventor 2010」(以下、「Inventor 2010」)を発表した。今回は、同年の3月19日に出荷を開始したCAD「AutoCAD 2010」との連携を強化し、UI関係の統合も進めた。AutoCAD 2010ではパラメトリック2次元作図が可能となったが、そちらと併せてInventor 2010の作図関係のUIをAutoCAD 2010と同様なものとした。またAutoCAD 2009から採用していたリボンUIもInventor 2010で採用した。
Inventor 2010ではAutoCADで作成したブロックがInventor側に取り込めるようになった。2次元図上で行う機構の駆動領域や重心の検討が従来より楽にできるようにしたという。AutoCAD上では、駆動する部品を動きに合わせて部品のブロックを複写していきつつ確認を行う。今回は、さらにInventor側の2次元作図機能にAutoCADのブロック定義を取り込めるようにし、部品ドラッグをして機構を自由に動かしての検討も可能となった。またAutoCAD上で検討した2次元の構想図を3次元化する際の支援も強化した。ブロックで定義したそれぞれの部品を3次元モデリング用にツリー化できる。それを利用して3次元モデル化をしていく。
今回より、オートデスクが2007年に買収したプラッソテック(PlassoTech)社の技術をInventorに統合した。従来のInventorに付属していたCAEはANSYSの「DesignSpace」だったが、今回から「3G.author」(3Ga)の技術を用いたCAEへ変えた。「アダプティブP-h法」により、解析に最適なメッシュの自動生成が短時間でできるという。従来は、ユーザーがメッシュをコントロールしていた。また新たに加わった「パラメトリック解析」機能は、ユーザーが望む解析結果に応じて、形状を最適化できる。その結果は、設計モデルデータと同期することが可能だ。
ユーザーから特に多かったリクエストとして、他社製の3次元CADデータのインポート機能の強化を挙げた。他社製のCADデータを中間フォーマットで取り込むと、データが化ける、あるいは破損するなどの問題が発生しやすい。これまでのInventorではすでに、「NX」(シーメンスPLMソフトウェア)、「Pro/ENGINEER」(PTC)、「Solidworks」(ダッソー・システムズ・ソリッドワークス)などのフォーマットを直接読み込むことができたが、Inventor 2010からはさらに、「CATIA V5」(ダッソー・システムズ)のR6〜18のデータフォーマットも対応した。またJTフォーマットのサポートも強化した。「CATIAは自動車業界で多く使われるハイエンド3次元設計ツールです。例えば、自動車メーカーから設計を請け負う場合、もらったCATIAの車両データをInventorに取り込み、それを基にして溶接治具を作るといった連携ができます」とオートデスク製造ソリューション 技術営業 シニアマネージャー 塩澤 豊氏は説明する。
今回から新たに加わるパッケージ「Tooling Suite」には、金型設計をサポートする機能が付いている。「コアやキャビ単体の設計データは3次元化されている場合が多いのですが、その後の全体の機構設計などは2次元で検討されることが多いです」(塩澤氏)。Inventorは、従来3次元化されていなかった部分に特に注力してサポートするという。またTooling Suiteでは、2008年6月に同社が買収したモールドフロー社の技術を利用した樹脂流動解析が可能だ。Inventor上で、成形品のウェルドの発生場所を予測し、ゲートの最適な位置の検討ができるという。
なお同製品の各種パッケージの出荷予定日や価格は、以下となっている。
オートデスクの製造ソリューション部は、設計データの3次元化そのものだけではなく、設計・製造関連と営業やマーケティング部門との連携をサポートする製品の提供を行う方針だという。
「製品のビジュアライゼーションといっても、設計データと商談用データとでは考え方が異なります。特に、顧客に訴求するためには画像のリアリティが重要となります」とオートデスク 製造ソリューション本部長 大谷 修造氏は説明した。すなわちレンダリング機能が高機能であることが望ましいということになる。それと併せ、動作が軽いこと、専門ソフトウェアの操作に慣れない人でも操作がしやすいことも同社製品では考慮しているとのことだ。
また生産の後工程にもデジタルプロトタイプが採用できるような環境の提供をしていくという。「生産設備のレイアウト設計のほとんどは2次元で行われている現状です。しかし、これだと高さ方向の検討がやりづらいです。そうはいっても、すべてを3次元化するのは不可能でしょう。当社では、例えば2次元のレイアウト図の中で、設備に配置する装置などのデータは3次元化できるような設計環境の提供を考えています」(大谷氏)。
上記のほか、同社はシミュレーションツールや解析ツールの強化も行っていく。
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