オートデスクは2009年2月19日、「Auto CAD 2010」「Auto CAD LT 2010」を発表した。同製品は3月19日より販売開始する。価格はAutoCAD 2010が61万4250円。AutoCAD LT 2010が19万9500円。対応OSは「Microsoft Windows XP」と「Microsoft Windows Vista」だ。
「いまから27年前にAutoCADが世の中に送り出される以前は、まだ紙の上で製図をしていました。かつてのオートデスクは、コンピュータ上で製図ができるようにすることで、作業を自動化し、生産性を向上することをコンセプトとしていました」と米オートデスク 副社長 兼 AutoCAD グローバルマネージャー グリ・スターク(Guri Stark)氏は話す。
そして、今回の新製品のコンセプトは、“デザイン”だとスターク氏はいう。「世界には、ますます3次元モデリングによるデザインが増えていると感じています。いまや2次元の製図だけではありません。今回は、既存のユーザーに、より操作性の良いツールを提供するとともに、まったく新しいツールも同時に提供したい考えたのです」(スターク氏)。
従来バージョンの2次元作図だと、既存図面で寸法変更があれば、線・図形描画やオフセット、トリムなどを組み合わせて図形を修正するしかなかった。それが今回のバージョンから、2次元製図でパラメトリック(拘束)が付加できるので、寸法値や正接などの拘束を固定したまま、変更したい部分だけ数値を変更、または点をドラッグして、図形が変形できるようになる。急な設計変更が舞い込んできた場合にも、これまでよりも容易に対応できるようになるという。
「パラメトリック機能によって、AutoCADでの作図がこれまでとがらりと変わります。さまざまな数値を試しながらの設計シミュレーションもできます」とオートデスク プラットフォームソリューション 清水 卓宏氏は話す。
AutoCAD 2006から追加した「ダイナミックブロック」にパラメトリックを適用することで機能強化した。「ブロック プロパティ テーブル」では、設計者は部品の細かいスペックを見渡しながら、数値を入力でき、ブロック図形データの寸法バリエーションを管理することができる。もちろん、その数値はブロックの図形へも反映される。またMicrosoft Excelの表データをコピーし、「ブロック プロパティ テーブル」内に直接ペーストすることが可能。この機能は、H形鋼やネジなどのカタログデータの管理に便利だ。
また今回は、従来からの機能であるPDF出力に加えて、取り込んだPDFファイルから図形情報も読み取ることができるようになった。この機能は、同社のユーザーグループ「AUGI」のウィッシュリスト(機能改善要望)でナンバー1の項目だったという。
「チーム設計の肝は、他人の図面をいかに効率よく使い回せるかにあります。従来のAutoCADでも、ほかの設計者が書いたDWGファイルを下敷きにして、自分の設計の内容をその上に載せるという作業はできていましたが、今回はさらにPDFファイルも下敷きとして使用できるようになりました」と清水氏は説明する。設計委託の現場などでもオリジナルの図面を生かした製図ができるようになるという。
AutoCAD LT 2010では、パラメータの設定や拘束条件の変更はできないが、AutoCAD 2010で設定された拘束条件を維持した状態での図形の修正が可能だ。
3次元モデリングの新たな機能「フリーフォームデザイン」は、流れるような曲線を再現できる。モデルにメッシュを切って、面の一部を引っ張り上げる、あるいはエッジを引き伸ばすなどして形状を修正できる。そのうえ、スムース処理を行うことで、滑らかな曲線の形状を作ることが可能だ。
またAutoCADの画面上から、3次元印刷を申し込めるようになる。ただし海外での受付となるため、日本では現時点、インターフェイスのみの提供のみだという。
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