月1のメンテナンスでしか使わないのに、その機構はちょっと凝り過ぎじゃない? よく考えて、機構を単純化しよう
産業機械は、搬送部や検査部、収納部、サポート部、そして機械本体の中で最も重要な心臓部などで構成されます。それらは、要求されている仕様に基づき稼働します。要は、通常使用する機能です。これを「生産用機能」とします。
しかし機械のユニット構成は、それだけではありません。例えば、通常は装置の中に収納されている部分を点検したり掃除をしたりするため、外部へ搬出させる機能などがそうです。このように、通常は使用しない機能を「メンテナンス用機能」とします。
VA・VEを行う際はまず、上記のような、性質の違う2つの機能を装置の中で明確に区別することが大前提です。装置の全体構成は、当然ですが、生産用機能がほとんどを占めます。だからなのか、「生産用機能とメンテナンス機能とを同等の機能にしておけば、全体的にバランスが取れているだろう」と曲解して設計してしまうケースが、筆者のコンサルティングの現場でも多々見られました。
生産用機能の定義とは、簡単にいえば、「お金を生み出す機能」です。一方、メンテナンス用機能とは、「お金を生み出さない機能」です。ですから、メンテナンス用機能には、過度にコストを掛けるべきではないと考えます。
そしてメンテナンスの頻度も考慮に入れて分析をします。例えば、「月に1回」と「年に1回」とでは、作業への負担の感じ方も異なります。
図1はメンテナンス用ユニットの例です。ユニットの中央部に配置されている灰色のプレートを下げ、メンテナンスができる状態にします。作業が終われば、元に戻します。また、このユニットは月に1度の頻度で使用するとします。
図1のユニットでは、薄茶のプレートを操作することで、紫色のプレートに開いている穴にピンがインローとなり、上下の位置を決めてくれるようになっています。プレートを下げたとき用と、上げて戻したとき用とで2カ所の穴が用意してあります。ちょっと力を入れて薄茶色のプレートを倒せば、その上部にあるプレートもつられて下がるようになっています。従来からよく見かける仕組みですが、ワンタッチ操作で、作業も楽ですね。
このユニットの部品点数は12個で、構成は表1のようになっています。見た目は簡易な機構ですが、案外複雑であることが分かります。
この課題では、図1のユニットを単純化し、部品点数を減らすことによってコストダウンができないかどうか、検討します。
まず、このユニットに要求される機能は「上下に動かせること」のみであるはずなのです。作業性の追求は、果たして本当に、ここまで必要なのか、まずは考えてみてください。
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