龍菜「例えば、フランジ部分が長方形でも、軸受けをボルト固定できるよね?」
ゆみ「でも、ひし形の方が格好いいですよ?」
龍菜「“格好いい”というのは、この場合“無駄がない”ということなんだ。『長方形のフランジをボルト固定して軸に力が加わった』と考えて解析した画像を見せよう(図6)」
ゆみ「軸を受けている部分やボルト固定部分は色が変わっていますね」
龍菜「これは、応力が集中していることを表しているんだ。でも、よく見ると長方形の四隅には応力が集中していないのが分かるかな?」
ゆみ「だから……」
龍菜「長方形の四隅にある無駄な材料(*外側の紺色の部分)をそぎ落としてもいいということ!」
ゆみ「だからひし形なんですね!」
龍菜「……その前に、ゆみさんは適当に基準面を作っていたけど、軸受けの設計基準は荷重の中心だよ?(図7)」
ゆみ「フランジの取り付け面じゃないんですね」
龍菜「そうだよ。誰もそんなところから、設計などしないよ。適当に基準面を決めて、ひし形のフランジ部分からモデリングを始めるなどというのは、“設計した結果の形”だけにとらわれた方法だ」
ゆみ「でもノンヒストリー系のCADだと履歴がないから、どんなモデリング手順であろうと、最後の形はできますよ」
龍菜「それは、形を作る以前に軸受けの内径や外形、フランジの基本形状が設計されていて、その結果である形状が分かっているからだよね?」
ゆみ「それはそうです」
軸受けの基本形状を考えるところから始め、ボルト固定に必要ならフランジを追加し、解析などを利用しながらひし形に整えていこう(図8)。
ゆみ「分かった! ヒストリー系のCADは、その過程をその都度モデリングしていくんですね」
龍菜「そういうこと!」
◇
ノンヒストリー系のCADでも、設計プロセスは同じだが、モデリングは最終形状だけを対象にしているということになる。どちらのCADを使おうが、設計プロセスは同じなのである。ヒストリー系のCADは設計プロセスをフィーチャとしてモデリングしていくようなものなので、頭の中が論理的に整理されている設計者ほどうまく使いこなせる、ということだ。
ゆみ「ノンヒストリー系CADの方が自由にモデリングできるからといっても、それは設計結果である最終形状だけ。それらを決定していく設計プロセスを知らなければいけない」
龍菜「分かったみたいだね!」
ゆみ「ガビーン! フィーチャ履歴の順番とか、あれこれ思い悩むということは、自分の頭の中で設計プロセスが論理的に整理し切れていないっちゅうことですか?」
あれれ? ゆみさんまで大阪弁になってきた!? まあ、次回も頑張ってやぁ。
西川 誠一(にしかわ せいいち)龍菜
1956年生まれ。キャディック 取締役 最高技術責任者。1999年、三洋電機退社後、多くの企業で3次元CADを活用した設計プロセス教育、およびコンサルティングを行っている。Webサイト「龍菜」では、「重要なものを見抜けば、世の中にモデリングできないものはない」というキャッチフレーズで、多くのモデリングテクニックも公開。
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