カタログにひかれて買うものの、いつの間にかホコリを被ってしまうCAE。そこに潜む本当の問題とは? CAEベンダのマーケティング担当者が本音を語る。
「CAE」とは「Computer Aided Engineering」の略で、実際のモノづくりの前に、コンピュータ上で仮想的にモノをつくり、さまざまな面から仮想実験を繰り返すことができる解析ツールのことを指します。このCAEを用いることによって試作・実験回数を減らし、コストを削減し、開発時間を大幅に短縮することができるといわれています。そのため、製造業の現場ではCAEに対する関心は高く、多くの産業分野・企業にて導入が進められています。
CAE自体の歴史は古く、1960年代から開発が進められています。しかし、それは長い間、専門的な知識を持った解析専任者(=CAE専任者)のみが扱うことのできる難しいツールであり、設計現場にとってみればCAEはまさにブラックボックス的な位置付けでした(図1)。またツール自体が高額であったことも手伝い、一般的にCAEはハードルが高いものと思われがちでした。CAEに対するそのような認識は現在でも一部で残っているかもしれません。
ところが昨今、CAEの操作性や性能の向上、低価格製品の出現も手伝って、前述の「解析専任者向け」とは別に「設計者向け」のCAEが扱われるようになりました。前者が解析者向けの高機能・高性能なものであるのに対し、後者は設計者(=解析初心者)向けで、通常の設計業務の中で、すぐに活用できるように機能を抑えた操作性の良いものといった位置付けになります。
現在の製造業の現場では、この「設計者向けCAE」の導入が進んでいます。これは設計の早い段階で解析を行うことで、品質向上、開発時間短縮、コスト削減といったさまざまな効果を得ることができるためです。例えば、開発の後工程で重大な問題を発見した場合、また、その問題を解決するために構想設計からやり直さなくてはならないといった場合、その開発時間、開発コストが増大することは容易に想像できます。場合によっては構想設計までさかのぼることができず、多少の品質の低下を覚悟のうえでツギハギ的な解決法を選択せざるを得ない場合もあるかもしれません。
一般に、問題点の発見が開発の初期段階であれば、その解決のためのコストや開発時間における影響も低く抑えられますが、後工程になるほど、問題解決のためのコストと開発時間が増大していきます。このように、設計初期段階から開発段階で発生するさまざまなリスクを取り去ることを目的として行われる開発は「フロントローディング開発」と呼ばれ注目を集めています(図2)。
ところが、このCAEによるフロントローディング開発には多くの課題があり、導入したもののなかなか定着させることができなかったり、時間がたつにつれて稼働率が落ちていき、まったく使われていないような例もあります。これはなぜなのでしょう。実際に導入した現場にはどのような問題が発生するのでしょうか? そしてその原因は何なのでしょうか?
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