日米独仏中が参加しなかった、「2040年までに全てゼロエミッション車」の宣言:自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)
さて、今週で「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が終わりました。自動車に直接関係のある話題としては、パリ協定の目標達成に向けてゼロエミッション車への移行を加速する宣言と、2022年の行動計画があります。
地球のために喜んでライフスタイルを変える人はほとんどいない
英国の一般紙The Guardianは、「地球を救うために喜んでライフスタイルを変えようとする人はほとんどいない」とする調査結果をまとめた記事を掲載しています(参考:Few willing to change lifestyle to save the planet, climate survey finds)。
米国、英国、スペイン、フランス、オランダ、ドイツ、スウェーデン、ポーランド、シンガポール、ニュージーランドで1000人を対象に調査を実施したところ、76%の人がより厳しい環境規制を受け入れると回答した一方で、46%は個人的な習慣を変える必要はないと回答しました。
また、「地球を守るためにどのような行動を優先すべきか」という質問に対しては、「すでに習慣化されているもの」「個人の努力が少なくて済むもの」「自分が直接責任を負う必要がないもの」を重視する傾向がありました。自分勝手で無責任なように見えますが、なかなかリアルですよね。
そういうタイプの人たちのうち一定数は、EVに買い替えた結果、今までと全く同じクルマの使い方ができなくなることを敬遠するような気がします。そしてそのような考えを持つ人は、EVが不便だといわれる点がいかに小さなことか、エンジン車のときの習慣を変えることがいかに簡単であるかを聞かせても、価値観を変えるまで時間がかかります。そこまで否定的でなくても、他に選択肢がある中で今わざわざEVを買う必要を感じないという程度の消極的な人も少なくなさそうです。
実際に、この調査で「地球を守るために重要だと思う対策」を尋ねたところ、「廃棄物の削減やリサイクルの拡大」「森林の再生」「絶滅危惧種の動物保護」「エネルギー効率の高い建物の建築」「再生可能エネルギーによる発電への置き換え」を挙げた人は半数前後に上りました。自分が個人的に努力しなくても、誰かがやってくれる……と思われがちな対策が多いですね。
しかし、「クルマではなく公共交通機関を使うこと」「化石燃料車の禁止」「肉の消費量抑制」「飛行機の利用を減らす」といった、個人のライフスタイルに変更が生じる対策について、重要だと回答した人は2割前後にとどまりました。
そんな人々が一定数いることを考えると、行動を変えさせるには購入補助や減税などのインセンティブが有効ではあります。しかし、各社ともゼロエミッション車を多数投入する中ではインセンティブが本来の目的を果たさない可能性もありますし、「他よりも安くなるから買う」という動機付けがどこかの段階で通用しなくなります。
ゼロエミッション車のみのラインアップにせよという法的拘束力は今のところなく、ユーザーの意向がどうあっても絶対に全車EVとするような断固たる姿勢の自動車メーカーもありません。環境保護のために喜んでライフスタイルを変える消費者ばかりではないことも示されました。誰もが相手の顔色と出方を伺い、互いに相手が動くまで自分は決定的な行動を起こせないと様子見で構えているように見えてしまいますね。
今週はこんな記事を公開しました
- 電動化
- 自動運転技術
- 車両デザイン
- 製造IT導入事例
- 組み込み開発ニュース
- 品質不正問題
- 編集後記
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 2035年にHEV禁止? 欧州の電動車推進の行方は
毎週のように電動化に関する話題を振り返っていますが、今週も大きなニュースがありました。EUの欧州委員会が気候変動対策案「Fit for 55」を発表。その中に、乗用車と小型商用車のCO2排出基準を厳しくする方針が含まれていました。 - 実車で走って分かった全固体電池の課題は「寿命の短さ」、EVよりもHEV向き?
トヨタ自動車は2021年9月7日、オンラインで説明会を開き、電動車の普及に向けた投資などの戦略を発表した。 - 全固体電池で注目高まる「電解質」、固体にするだけでは意味がない!?
今回は、リチウムイオン電池の正極と負極の間にある「電解質」、そして「全固体電池」について解説していきます。 - 電動車100%へ330億円を投資した日産・栃木工場、開発中の燃料電池は定置用で活躍
日産自動車は2021年10月8日、330億円を投資して栃木工場(栃木県上三川町)に導入した次世代の自動車生産の取り組み「ニッサンインテリジェントファクトリー」を公開した。日産自動車 執行役副社長の坂本秀行氏は「複雑かつ高度なクルマをつくるための、変動に強い生産現場と生産技術は明日の日産の飛躍の要になる」と生産領域に投資する重要性を語る。 - ホンダがインドで電動三輪タクシー、エンジン車より安く、走行距離は気にならない
ホンダは2021年10月29日、2022年前半からインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けにバッテリーシェアリングサービスを開始すると発表した。 - ホンダが新型EVとコンセプトモデルを披露、中国から他地域へのEV輸出も視野
ホンダは2021年10月13日、オンラインで「中国電動化戦略発表会」を開催した。 - EVの価格競争は「100万円以下のクルマを必要とする5億人」のためにある
日本電産は2021年10月26日、オンラインで2022年3月期第2四半期(2021年4〜9月期)の決算説明会を開催した。