実車で走って分かった全固体電池の課題は「寿命の短さ」、EVよりもHEV向き?:電気自動車(1/3 ページ)
トヨタ自動車は2021年9月7日、オンラインで説明会を開き、電動車の普及に向けた投資などの戦略を発表した。
トヨタ自動車は2021年9月7日、オンラインで説明会を開き、電動車の普及に向けた投資などの戦略を発表した。
同社は2021年5月に従来の電動車販売の見通しを修正し、2030年にグローバルでHEV(ハイブリッド車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)、EV(電気自動車)の販売を合計800万台とした。このうち、EVとFCVが合計200万台と見込む。2017年の時点では2030年に電動車販売が合計550万台で、このうちEVとFCVが合わせて100万台としていた。
足元のトヨタ向けの電池の生産量は6GWhで、電動車の販売800万台を実現するには電池の供給を30倍に拡大する必要がある。これまでHEV向けに20年かけて拡大してきた生産体制を、今後10年で同じだけ拡大するハイペースが求められる。
この大幅な上方修正に伴い、2030年までに電池の開発と供給に対して1.5兆円を投資する。このうち1兆円が電池の供給向け。EV向けでは2025年ごろまでにリチウムイオン電池の生産ラインを10本増設する。さらに、2030年まで年間10本以上のペースで生産ラインを順次増やしていく。いずれも電池のサプライヤーと協力して生産体制を構築する。トータル70本の生産ラインをEV用とし、年間生産量としては200GWh以上も視野に入れる。
増設する生産ラインは、少量生産であっても競争力を確保でき、リードタイムや人員、生産量が柔軟な“小さな原単位”にこだわる。ライン1本を小さくし、部分的な能力増強など小刻みな投資を行うことで、かつてのリーマンショックのように生産を減らさざるを得ない局面にも強い体制をつくる。
開発面では、1台当たりの電池コストを2020年代後半までに50%削減する。電池単体でのコスト低減と、車両の電費(電力消費)の改善の両輪で達成する計画だ。廉価な材料や製造プロセスの新たな開発により、電池は単体でコストを30%以上低減。また、電費を30%改善することで電池容量(=コスト)が30%減らせるとし、車両と電池の一体開発を推進する。これにより、EVをリーズナブルな価格で提供する。
電費は、走行抵抗の低減、軽量化、空力の改善、ブレーキの引きずり減少などメカ面の“愚直”な作り込みや、パワー半導体などパワーコントロールユニットの電気抵抗の改善によって達成する。「加速に使うエネルギーを減らし、減速時に回生できるエネルギーを増やす。クルマの素性を磨いておくことは、将来新しい電池を使うときにも生きてくる」(トヨタ自動車 CTOの前田昌彦氏)。車体と電池を一体構造とするパックレス化も検討する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.