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全固体電池で注目高まる「電解質」、固体にするだけでは意味がない!?今こそ知りたい電池のあれこれ(6)(1/3 ページ)

今回は、リチウムイオン電池の正極と負極の間にある「電解質」、そして「全固体電池」について解説していきます。

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 これまで本コラムでは、リチウムイオン電池の代表的な正極材料負極材料について解説してきました。

 リチウムイオン電池が二次電池として機能するためには、充放電に伴って正極と負極の間で電荷担体(キャリア)となるリチウムイオンが移動する必要があります。そこで重要となってくる材料が「電解質」です。近年注目されている「全固体電池」も電解質に大きな特徴をもった電池です。

 今回は、リチウムイオン電池の正極と負極の間にある電解質、そして全固体電池について解説していきます。

→連載「今こそ知りたい電池のあれこれ」バックナンバー

電池の性能を決めるのは、正極材と負極材だけではない

 電池における電解質とは、正極と負極の間でキャリアの輸送を担う物質のことです。リチウムイオン電池では、一般的に炭酸エステル系の有機溶媒にLiPF6などのリチウム塩を溶解した非水系の電解液が用いられています。

 リチウムイオン電池の電解液に求められる特徴の1つは「電気化学的な安定性」です。本連載の第3回で紹介したように、鉛蓄電池やニカド電池、ニッケル水素電池などの水系電解液を用いた電池の場合、電解液中の水が電気分解してしまうため、電池の起電力を高くするには限界があります。

 一方、リチウムイオン電池の電解液は、電位窓(その物質が電気分解されない電位領域)の広い有機溶媒や耐酸化性に優れたリチウム塩を使用しているため、水系電解液よりも高電圧耐性が向上し、エネルギー密度を高めることができています。

 また、本連載の第5回で紹介したSEI(固体電解質界面)の形成しやすさにも電解液の性質が大きく関わってきます。SEIは電解液の還元反応による分解を抑制し、リチウムイオン電池の長期安定動作に寄与しています。安定なSEIを形成することができる有機溶媒やリチウム塩であるということも電解液材料に求められる重要な特徴の1つです。


SEI(固体電解質界面)とは(クリックして拡大) 出典:理化学研究所、高輝度光科学研究センター

 SEI被膜の良好な形成のため、電解液に添加剤を用いることも一般的です。例えば、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などを添加することで良質なSEIが生成し、電池特性が改善することが知られています。

電解質は液体からゲルに

 さらに、良好な電池性能を得るため、電解液に求められる特徴は「イオン伝導率」です。これは、正極・負極間をどれだけ多くのリチウムイオンが高速で移動できるか、つまりリチウムイオンの濃度や移動速度によって決まります。

 本コラムではあまり専門的な内容へ踏み込まないようにしているため、具体的な計算式や詳細な原理は割愛しますが、炭酸エステル系の有機溶媒、LiPF6などのリチウム塩といった一般的な材料の多くは、粘度、誘電率、溶解度といった種々の特性でイオン伝導率を高め、リチウムイオンを動きやすくすることが可能であることから採用されている、という背景があります。

 炭酸エステル系の有機溶媒を使用した一般的な電解液はリチウムイオン電池に適した特性を有する半面、液漏れや発火の懸念があります。そういった危険性を低減するため、電解質の「高分子ゲル化」が検討されるようになりました。いわゆる「リチウムポリマー電池」や「リポバッテリー」などと呼ばれるタイプの電池です。

 高分子ゲルに電解液を含有させ、流動性を下げることで液漏れを防ぐことが狙いですが、当然のことながら単に固めればいいというわけではなく、液体状の電解質と同等の性能であることが求められます。液漏れを防ぐだけであればゲルをカチカチに固めてしまえばいいのですが、あまり固めすぎるとゲルへの溶媒保持量が減少し、イオン伝導率の低下や電気抵抗の増大を引き起こしてしまうため、電池性能のバランスを考えた材料設計が必要です。

 現在ではフッ化ビニリデン系共重合体からなる高分子ゲル電解質を用いた電池がスマートフォンなどをはじめとする多くの製品に使用されています。

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