コラム
「これ以上の豊かさはいらない」といえる分野、いえない分野:モノづくり総合版メルマガ 編集後記
自分に向けて言うのはいいかもしれませんが、他者、特に次世代に向けて言うべきではありません。
「これ以上の豊かさはいらない」といえる分野、いえない分野
「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の開催期間中なので、気候対策に関するニュースが多いですね。先日、石炭火力発電の廃止を求めて東京都内で実施されたデモの中で、高校生が「これ以上の豊かさはいらない」と街頭で訴えたのを紹介したニュースがありました。個人的に観測できる範囲では、その認識の甘さを指摘する意見が複数見られました。
石炭火力発電の廃止と、これ以上豊かな生活はいらないという主張を結び付けたのは、うまい見せ方ではありませんでした。東日本大震災のあとの計画停電、台風などの災害に伴う停電、冬場の電力逼迫などを考えると、安定した電力なしに今の生活を現状維持することさえ簡単ではないからです。病院など電力が人の命をつないでいる場所もあります。
日本で使う電力のうち、石炭で発電する電力の比率は決して小さなものではない中で、漠然と“脱石炭”を叫んでも、「原発賛成ということか?」「電力供給が不安定になった分の犠牲をどう考えるのか」というツッコミが入るのは当然です。
「これ以上の豊かさはいらない」という感覚には同意できる部分もあります。例えば、Amazonで注文した急ぎでも何でもない日用品が深夜に発送されて翌日届くような、必要以上に過剰なサービスを受けていると「そこまでしなくても……」と思ってしまいます。しかし、「これ以上豊かじゃなくていい」と押し付けてはいけない場面の方が多いようにみえます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫過去の編集後記
- EVの価格競争は「100万円以下のクルマを必要とする5億人」のためにある
日本電産は2021年10月26日、オンラインで2022年3月期第2四半期(2021年4〜9月期)の決算説明会を開催した。 - 中国でEV用バッテリーをターゲットに保険やサービス、パナソニックと三井住友海上
パナソニック、中国太平洋財産保険、三井住友海上火災保険は2021年11月8日、中国で電気自動車(EV)向けの新たな保険商品やサービスの提供や、新たな事業創出に向けて協力する協定を締結したと発表した。 - ホンダがインドで電動三輪タクシー、エンジン車より安く、走行距離は気にならない
ホンダは2021年10月29日、2022年前半からインドで電動三輪タクシー(リキシャ)向けにバッテリーシェアリングサービスを開始すると発表した。