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日米独仏中が参加しなかった、「2040年までに全てゼロエミッション車」の宣言自動車業界の1週間を振り返る(1/2 ページ)

さて、今週で「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が終わりました。自動車に直接関係のある話題としては、パリ協定の目標達成に向けてゼロエミッション車への移行を加速する宣言と、2022年の行動計画があります。

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 1週間おつかれさまでした。土曜日です。寒すぎない穏やかな日が続いていますね。まさに小春日和ですが、空気の乾燥が気になります。洗濯物が部屋干しでもパリッパリに乾くのはうれしいですけれども、肌はもちろん、目や鼻の粘膜、頭皮に至るまで全身カサカサです。これまで、一度乾燥で荒れ始めると春まで不調のままということもありましたので、今年は水分と油分を塗りたくりながら防衛していきます。風邪もひきたくありませんね。皆さまも、気を付けてお過ごしください。

 さて、今週で「COP26」(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の予定されていた会期が終わりました。自動車に直接関係のある話題としては、パリ協定の目標達成に向けてゼロエミッション車への移行を加速する宣言(※1)と、2022年の行動計画(※2)があります。

 宣言は、主要市場で2035年まで、世界全体では2040年までに、乗用車や商用バン(原文ではCars and Vansとあります)の新車販売全てをゼロエミッション車とすることを目指しています。これに賛同した自動車メーカーは目標達成に向けて努力し、ゼロエミッション車の需要を開拓します。同じくこの宣言に賛同した自動車メーカーに出資する投資家や金融機関も、目標達成に向けてサポートします。

 この宣言は法的拘束力がなく、大手自動車メーカーの本社がある日本、米国(州や自治体として宣言に参加しているケースはあります)、ドイツ、フランス、そして最大の自動車市場を抱える中国は参加していませんし、その他にも不参加の国が幾つかあり、全会一致ではありませんでした。

 宣言に賛同した自動車メーカーも何社かありました。大手では、フォード、GM(General Motors)、ジャガーランドローバー、メルセデス・ベンツ、ボルボカーズ、BYDなどが名を連ねています。いずれも新車販売全てをゼロエミッション車にすると明言しています。その時期について、フォードとボルボカーズは2030年、GMは2035年、ジャガーランドローバーは2036年と発表しています。メルセデス・ベンツは2025年以降に発売する新型車をEVとします。

 しかし、2030年までにラインアップの90%をEVにするというルノーや、2040年までに新車をEVもしくはFCV(燃料電池車)とするホンダは宣言に参加していませんね。参加してもおかしくないように思いますが……。そのあたりからも、なんとなく足並みのそろわない印象のゼロエミッション車移行宣言でした。

 行動計画では、ゼロエミッション車向けのインフラ整備に関するビジョン策定のため、自動車メーカーとエネルギー事業者、インフラ事業者で協力してアクションを検討することとしました。EVの増加に対応した電力網の準備や、グリーン電力のバランスについても検討します。この行動計画の方には日本や米国、ドイツなどが賛同しています。

 ゼロエミッション車の導入支援につながる、CO2や燃費に関する基準づくり、大型車向けの技術検討、ゼロエミッション車普及でどの市場も取り残さないための活動なども、行動計画に含まれています。中古車市場の発展のためのバッテリー評価などの仕組みづくり、持続可能なサプライチェーン実現に向けた協調、電動化の中で新たな雇用を創出する従業員の教育なども取り組みに挙げられています。

EVに対する、経営陣の一言

 今週、決算会見で日産自動車の代表執行役最高執行責任者アシュワニ・グプタ氏は、質疑応答の中で次のように発言しました。「われわれはEVのパイオニアとして『リーフ』を2010年12月に発売した。当時、ユーザーにも市場にも求められていなかったが、EVを投入した。革新性やイノベーションを示したかった」。誰にも求められていないけれどもEVを発売する必要があった、という率直な振り返りが印象に残りました。

 同じく今週、新型EV「ソルテラ」を披露した会見で、スバル 代表取締役社長の中村知美氏もEVと新車市場について発言しています。

 「EVはマーケットが立ち上がり始めた時期で、本格普及までの移行期間はアライアンスを活用してやっていくことが重要だと学ぶことができた。マーケットが成熟していない中に独自開発の専用車で入っていくのは経営的には危険なことだと受け止めている」(中村氏)

 「EVのシェアは日本で1%、米国で3%未満だ。中国と欧州がそれよりも先行しているが、本格的に普及するまでは、アライアンスとの協業で協調領域として対応していくのが基本になるだろう。しかし、EVが普及し、EVだけになったときには競争領域が出てくる。それまではアライアンスを活用するが、いずれどこかでトヨタとも競争しなければならないときがくる」(中村氏)

 気候変動対策のためにCO2排出削減が必要であることを疑う自動車メーカーはいません。ゼロエミッション車の必要性も全ての自動車メーカーが認識しています。世界中でゼロエミッション車を普及させなければならないという機運も高まっています。しかし、EVが誰にも求められていなかった2010年末から10年以上が経過した現在においても、EVは経営的にハードルの高い市場のままだという印象が強まりました。

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