設計意図を3Dモデルに組み込むとは? 寸法と形状に理由を持たせる設計:若手エンジニアのための機械設計入門(22)(3/3 ページ)

» 2026年11月05日 07時00分 公開
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パラメトリック設計で注意したい点

 今回のモデルを例にすると、表1のように整理できます。

項目 パラメトリック設計での考え方
ストローク 設計変更の基準パラメーターとして設定
ガイドレール ストロークと必要な案内長さ/余裕寸法から決定
ボールねじ ストロークと支持構造/必要余裕から長さを決定
ベース 関連部品の配置と必要なスペースに応じて変更
支持部品 軸受の支持位置や部品間の関係を維持
移動プレート 移動範囲とガイドとの位置関係を維持
設計検証 干渉、強度、剛性、寿命などを再確認
表1 ストローク変更に対応するパラメトリック設計の考え方の一例

 この表は、直動機構のストローク変更を想定したパラメトリック設計の考え方を整理したものです。ストロークを基準となるパラメーターとして設定する一方、全ての寸法を連動させるのではなく、変更すべき寸法と維持すべき条件を区別します。また、形状を変更した後には、設計の妥当性をあらためて確認することも重要です。

設計意図は次の設計者にも伝わるか?

 最後に、もう一つ考えてほしいことがあります。皆さんが作成した3Dモデルを、別の設計者が使うことになったらどうでしょうか。例えば、数年後に製品の改良設計を行うことになり、過去の3Dモデルを開いたとします。

 そのとき、寸法やフィーチャーが整理されていなければ、どこを変更すればよいのか、どの寸法を変更してはいけないのか、判断に迷うかもしれません。一方、基準となる寸法や部品間の関係が明確であれば、モデルを理解するための手掛かりになります。さらに、フィーチャーに分かりやすい名前を付けたり、必要に応じてコメントや設計資料を残したりすることで、設計者の考えを伝えやすくなるでしょう。

 ただし、3Dモデルだけで設計意図の全てを表現できるわけではありません。例えば、板厚10mmを採用した理由が、強度計算によるものなのか、加工上の制約によるものなのかは、モデルを見ただけでは分からない場合があります。そのため、設計計算書や検証結果など、必要な情報を3Dモデルと関連付けて管理することも大切です。

 筆者は、3Dモデルを単なる形状データとして終わらせるのではなく、設計者の考えを次の設計者へ伝えるための情報として活用してほしいと思っています。

まとめ:3Dモデルには設計者の考えを込めよう

 今回は、設計意図を3Dモデルに組み込むということについて考えてきました。3D CADでは、同じ形状をさまざまな方法で作成できます。しかし、完成した形が同じであっても、寸法の与え方や拘束条件、フィーチャーの構成によって、設計変更への対応は異なります。

 だからこそ、形を作る前に、その形状や寸法をどのような考え方で決めるのかを整理することが重要です。筆者は、若手エンジニアの皆さんに、3D CADを操作するとき、次のことを考えてほしいと思っています。

  • なぜ、この寸法なのか
  • なぜ、この位置なのか
  • この寸法を変更したら、何が変わるのか

 こうした問い掛けを繰り返すことが、設計意図を意識したモデリングにつながります。そして、もう一つ大切なのは、3Dモデルに設計意図を組み込むことは、設計そのものを考えることでもあるという点です。

 3D CADの操作を覚えることは、もちろん必要です。しかし、操作方法だけを覚えても、設計の考え方が身に付くわけではありません。3D CADは、設計者が考えたことを形にし、その妥当性を確認するための道具です。そこには、設計者自身の知識や経験、さらには工学的な判断が求められます。

 これまでの連載では、機械設計の基本的な考え方から、3D CADを活用した設計まで、さまざまなことを取り上げてきました。いよいよ次回が、この連載の最終回となります。

 最終回では、これまでの内容を振り返りながら、「機械設計者に求められる力とは何か」、そして「3D CADを設計の道具として使いこなすためには何が必要なのか」について、筆者自身の経験も交えながら考えてみたいと思います。お楽しみに! (次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)
DOBASHI DESIGN LAB 代表/Founder&Principal

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカー、製品設計会社を経て独立し、開発/設計/製造DXを現場経験で支援するDOBASHI DESIGN LABを創立。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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