それではL金具をボルトで固定したらどうでしょうか。図14にボルト締結されたL金具を示します。
ボルトは決められたトルクでギューっと締め付けられているので、この効果も考慮しましょう。ボルトの締結トルクとボルトが発生する軸力は過去の記事で紹介しましたね。A2-70のM8ステンレスボルトを使うとして、軸力は式3で表されます。
ミゼス相当応力は圧縮応力も引張応力もプラス値で表現されるので、引張応力を評価するために第一主応力を見ましょう。図15に示します。板の部分の応力は公称応力となりますが、ボルトの穴付近の公称応力は、ボルトの穴分だけ断面積が小さくなるので92.3[MPa]となります。
今度はボルト用の穴に応力集中が発生しますね。無限平板に開けられた円孔の応力集中係数αは3[-]で、有限平板のαはそれより小さいので、α=3[-]としたいのですが、有限要素法による結果を使いましょう。
図16に解析結果を示します。応力集中を考慮した最大応力は232.7[MPa]となりました。公称応力は「荷重/断面積」で、応力集中係数は両者の比で2.52[-]となります。ボルト穴の切欠係数βは相変わらずβ=2[-]です。
今度は溶接部の残留応力はありませんが、片振り荷重と考えると、計算された応力の半分(応力振幅となります)を平均応力として式1から疲労限度を求めます。第一主応力を評価するので、ボルト軸力による応力は圧縮応力なので勘定に入れないでおきましょう。
安全率を考慮しない疲労限度σwを求めましょう。
片振り荷重と考えて、公称応力ベースの応力振幅は上記公称応力(92.3[MPa])を2で割ったもので、46.1[MPa]となります。安全率を考慮しない疲労限度(σw/β)より小さな値なので、ボルト穴近傍からき裂は発生せず、疲労破断しないと予測されます。
何かの目的で繰り返し荷重の作用しないL金具を取り付けた例でした。L金具ではないのですが、穴をふさぐために溶接をして、そこから疲労破断した例のコンサルタント業務をしたことがあります。計算数値を表1にまとめました。
すみ肉溶接でL金具を付けると、溶接ビードには直接的な荷重は作用しませんが疲労破断し、L金具をボルトで取り付けた場合は疲労破断しないという結果となりました。
L金具に荷重が作用していないから、強度計算は不要と考えてしまったところがポイントで、溶接したら疲労破断しやすくなります。安易に溶接すべきではないということが今回の教訓となります。 (次回へ続く)
高橋 良一(たかはし りょういち)
RTデザインラボ 代表
1961年生まれ。技術士(機械部門)、計算力学技術者 上級アナリスト、米MIT Francis Bitter Magnet Laboratory 元研究員。
構造・熱流体系のCAE専門家と機械設計者の両面を持つエンジニア。約40年間、大手電機メーカーにて医用画像診断装置(MRI装置)の電磁振動・騒音の解析、測定、低減設計、二次電池製造ラインの静音化、液晶パネル製造装置の設計、CTスキャナー用X線発生管の設計、超音波溶接機の振動解析と疲労寿命予測、超電導磁石の電磁振動に対する疲労強度評価、メカトロニクス機器の数値シミュレーションの実用化などに従事。現在RTデザインラボにて、受託CAE解析、設計者解析の導入コンサルティングを手掛けている。⇒ RTデザインラボ
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