プロジェクトの全体統括と臨床評価を担当する北海道大学 教授の工藤與亮氏は「医用画像の高解像化、大容量化が進展しており、現行のGPUでは高度な画像再構成や画像処理が追い付かない状態になっている。GPUがボトルネックになっており、性能を落として運用しているような状況だ。一方で、患者の個人情報管理やネットワーク帯域の問題もあってクラウドで集中処理することも難しい。医療現場ではAIの学習は不要なので、消費電力が数百WになるGPUに替えて、推論に特化したAIチップにより、低消費電力かつ低遅延で、エッジである医療機器内で医用画像を処理できるようになることが求められている」と説明する。
プロジェクトの事業項目は、富士フイルムが担当する「リアルタイム画像診断支援」、GEヘルスケア・ジャパンが担当する「リアルタイム診療支援」、北海道大学とimecが担当する「リアルタイム手術支援」の3つがある。
「リアルタイム画像診断支援」では、フォトンカウンティングCTに代表される次世代CTの大容量画像データに対応するため、深層学習ベースのCT画像高速再構成AIおよび臓器セグメンテーション/解剖認識AIを開発する。フォトンカウンティングCTは従来比4倍の高解像度になっており、物質弁別ではさらに3〜5倍のデータ量になるという。
現在、CT画像再構成AIの速度は毎秒5スライスにとどまっているが、これを5倍の毎秒25スライスに高める。また、臓器セグメンテーションは、1000種類(クラス)の解剖構造を全身で識別する必要があり、現在25秒かかっているところを5秒に短縮する。
「リアルタイム診療支援」では、CT/MRIで撮像した医用画像を超音波検査中にリアルタイムで重ね合わせて表示するためのリアルタイム位置合わせ(レジストレーション)AIを開発する。呼吸などによる臓器の変形、位置ずれをリアルタイムかつ継続的に補正し、肝腫瘍の焼灼術や生検などの画像誘導下治療で活用すること目指す。リアルタイム重ね合わせの速度は15fpsを目標としている。
「リアルタイム手術支援」は、手術顕微鏡の術中画像を入力として、手術器具の追跡と認識、解剖学的構造などの自動認識、リアルタイム出血検知を実行し、結果を統合した手術動画解析AI Boxとして成立させることが目標だ。これら3タスクを統合したリアルタイム追従の速度で30fps、電力性能比でGPUの10倍を目指す。北海道大学がベースラインモデルの開発と評価設計を行い、推論に特化した2nm世代半導体への変換や最適化、量子化、パイプライン統合などはimecが担当する。
工藤氏は「今回のプロジェクトにおける“現行GPU”は、サーバなどに用いられるNVIDIAの『H100』や『H200』ではなく、コンシューマー向けレベルのより入手しやすいもののことだ。研究期間の5年間でGPUも2〜3世代進んで性能が3〜4倍になるが、今回の開発プロジェクトにおける推論に特化した2nm世代半導体によって目指す画像処理速度5倍以上、エネルギー効率10倍以上という目標は十分競争力があると考えている」と述べている。
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