「ひげそりは洗面台」を変えた、パナソニックの“小さいシェーバー”ヒットの理由:小寺信良が見た革新製品の舞台裏(42)(3/5 ページ)

» 2026年10月13日 07時00分 公開
[小寺信良,MONOist]

スティック型と変わらぬ性能へ

小寺 6枚刃となった理由をお伺いします。金色の「アゴ下トリマー刃」が1つ増えました。刃が増えればそれだけいっぱいそれるというのは想像できるんですが、逆になぜこれまで5枚刃だったんでしょう。

池田氏 まず(従来製品でラインアップした)3枚刃と5枚刃の間の性能差は、すごく大きいんですね。5枚刃ならある程度ひげの濃い方でもおおむね満足いただけるだろうと判断し、2023年の初号機では「あの5枚刃がこのサイズに」という分かりやすさも含めて、5枚刃から導入を始めました。

 その後、3枚刃の製品をラインアップに加えましたが、今回はさらに最高の体験をパームインでも提供していこうと考え、従来はスティック型にしかなかった6枚刃を搭載したという順番です。

小寺 網刃の大きさは、5枚刃と6枚刃では変わらないんですか。

池田氏 幅は一緒ですが、穴の配列が違うんです。千鳥配列というんですが。

田中氏 従来の網刃の穴の配列は比較的真っすぐですが、そうなるとひげが流れてきたときに、この桟(さん)の部分に当たって1回で入らないことがあります。一方、新製品の6枚刃の方は、斜めに穴を配列しており、1回目からどこかに入るようになります。網刃1枚あたりのひげの導入率(網刃の穴にひげがしっかり入る確率)だと、約50%アップとなっています。

photo 6枚刃(左)と5枚刃の違い(右)。金色の刃が1枚増えているが、幅もサイズ感もほとんど変わっていない[クリックで拡大]

小寺 こうした日常使いできるコンパクトモデルって、製造や耐久性の面でなかなか設計も大変なんじゃないかと想像します。

田中氏 その点は技術的にも難しいところです。トラベル用としてコンパクトなシェーバーは作れるんですが、日常使いで5枚刃や6枚刃をこのサイズにするというのは、とても難しいです。特にパナソニックの技術力でいうと、モーターが一番寄与しているところになります。

永島氏 シェーバーにとって刃を動かすモーターはまさに心臓部というべきものですが、ラムダッシュ パームインでは、刃の下の部分にリニアモーターヘッドが入っています。まず、1分間に1万4000回動く高性能なリニアモーターを、めちゃめちゃ小さく作ることができるというのが技術的にはとても難しいです。

photo 1分間に1万4000回駆動する高性能のリニアモーターを小型化[クリックで拡大] 出所:パナソニック

小寺 1つのモーターで全ての刃に対して均等に力を分散して動かすというのは、メカ的にもかなり難しいように思います。

永島氏 このリニアモーターの固有振動数で、一番振れやすい振動数によって動かしているからこそ最適に動作し、手で持てるのですが、少し重さやバランスが変わるとその振動数が変わってしまいます。例えば、前は動きやすいけれど後ろは動きにくいとか、逆にずれることによって本体がめちゃめちゃブルブルするといったことが起こります。

 そのため、本当にグラム以下の単位で重さやバランスを調整しています。また全てを同じ方向に動かすのではなく、交互に動かすことで振動を打ち消したりする工夫が盛り込まれています。

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