PLMの会計論:プロダクト損益と原価企画モノづくり革新のためのPLMと原価企画(8)(1/2 ページ)

本連載では“品質”と“コスト”を両立したモノづくりを実現するDX戦略を解説する。第8回は、プロダクト損益と原価企画の関係性や違いを整理し、製品開発における固定費の回収管理について取り上げる。

» 2026年08月28日 06時00分 公開

 プロダクト損益は、期間に依存せず、プロダクトを中心とした損益管理となる。これに近い概念として、「原価企画」が挙げられる。今回は、プロダクト損益と原価企画の関係性や違いについて解説する。

>>連載「モノづくり革新のためのPLMと原価企画」のバックナンバー

 今回は、企画量産型の製品を前提とした解説とする。個別受注製品の場合は、別の機会に解説する予定である。

原価企画とプロダクト損益は何が違うのか

 あらためて、プロダクト損益の分かりやすい特徴としては、次の2点が挙げられる。

  1. 会計期間に依存しないこと
  2. 製品企画段階から販売ライフサイクルまで、一気通貫で損益管理すること

 一方、原価企画は、製品企画段階から利益目標の達成に向けて目標原価を設定し、原価を作り込む活動となる。原価企画も会計期間に関係なく、プロダクト単位で原価を管理するという意味では、プロダクト損益と非常によく似ているが、プロダクト損益の方がもう少し広い概念であると捉えてもらいたい。

 プロダクト損益と原価企画の大きな違いとしては、対象期間が挙げられる。原価企画は上流の企画段階から実施するが、量産後の「初期流動解除」のタイミングで活動が終了することが多い。原価企画は開発のプロジェクト管理に主眼が置かれているため、開発プロジェクトの解散と同時に活動が終了してしまうのだ。

 しかし、量産後の初期流動解除のタイミングでは、先行投資した固定費を回収し始めたばかりで、実際には利益が出ていない。売価と1個当たりの(計算上の見掛けの)原価を比べれば、1個当たりの利益が出ているように思えるが、これはあくまでも「見掛けの利益」である。本来は固定費を回収し終わってから、初めて利益が出るはずだ。

 繰り返しになるが、原価企画は、開発プロジェクトにおける原価の作り込み活動の管理が中心となっているため、開発に投じた固定費を回収するという「投資−回収」の経営的なマネジメント体系ではない。

 誤解してほしくないのは、ここでの主張は原価企画を否定したいわけではないということだ。原価企画はすばらしい開発マネジメントであり、今後も継続的に実施することが必須である。そして、原価企画を包含する形で、プロダクト損益も考えるべきだと言いたいのだ。

製品開発への投資を「回収」まで管理する

 原価企画とプロダクト損益の違いを、経営目線で捉え直すとどうなるか。どの企業も投資をする際には、回収できるかどうかが重要なポイントとなる。設備投資にしても、システム投資にしても、投資−回収の妥当性を厳しく問われた上で、意思決定が行われる。

 製品開発も大きな投資である。そのため、実際に開発へ着手する前に、「開発Go/NoGo」の判断が求められる。人/設備/金型などの投資(固定費)、利益の見込み、リスクなどから総合的に判断し、場合によっては開発実施を見送ることもある。

 その中で製品開発に着手し、製品をリリースして製造/販売が始まったら、当初見込んだ利益が出ているのか、その利益によって投資した固定費が回収できているのかを確認する必要がある。投資額に対してどこまで回収できているのかを把握する「回収管理」が必要になるのだ。

 しかし、この開発投資に対する回収管理が不十分なのだ。多くの場合、投資した固定費について、毎年の減価償却費としての費用計上と残存簿価の管理のみを行っている。これは回収管理ではない。単に費用計上を行っているだけだ。投資の総額に対して、回収の総額を管理しなければならないからだ。

 そう考えると、モノづくり企業の根幹である製品開発について、その投資の「回収管理」が行われていないというのは、経営管理を高度化する余地が残っているといえる。「固定費の回収管理」という視点からも、プロダクト損益は欠かせないデータとなるはずだ。

固定費回収のマネジメント 図1 固定費回収のマネジメント[クリックで拡大]
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR