そこでキヤノンは、製造業におけるXRの定着を阻む壁を突破するため、PC向け3DCGコラボレーションソフトウェアであるMREAL Collaboratorの提供を開始する。キヤノン IMG32事業推進センター 主任の角田弘幸氏は、特長について「マルチデバイスで、誰でも使えて属人化しない」と説明している。
MREAL Collaboratorは、XR業界におけるデバイスとソフトウェア間の標準規格であるOpenXRに準拠している。これにより、キヤノンのMREALだけでなく、他社製のXR対応デバイスも使用できる。ユーザーは手持ちの既存デバイスを活用してXR環境を構築でき、追加投資を抑えて検証を開始することが可能だ。データは同一拠点内であればネットワークに接続せず利用が可能で、外部へのアップロードも不要である。一方で、ネットワークに接続すれば最大4人まで異なる拠点や異なるデバイスからオンラインで接続できる。実寸大の3DCGをリアルタイムに共有しながら設計レビューや部門間連携を行うことが可能だ。
また、キヤノンのMREAL専用の既存ソフトウェアから機能を絞り込み、UIを刷新し画面表示をシンプルにした。3DCADファイルの読み込み(有償オプション)を利用し、読み込んだデータは3DCADのツリー構造をそのまま引き継ぎ、ノード単位で編集できるため、用途に応じて最適なツリー構造を構築できる。また、ノード単位での位置調整や表示、非表示の切り替えの直感的操作が可能だ。
MREAL Collaboratorは、提供開始時の基本機能を無償としている。NXやCATIA V5などのCADファイル形式を使用する場合に限り、有償オプションの購入が必要となる。
無償提供の狙いは、まず各企業の現場にソフトウェアを導入してもらうことにある。自社が持つ3Dデータという「素材」をXR環境でどのように活用できるか、その運用法やワークフローといった「レシピ」を現場主導で試行錯誤するプロセスを促している。「製造業において、ノウハウを詰め込んだ“レシピ”を作る上でも、まずは素材を知り、何が創れるかを考えることが第一歩となる。MREAL Collaboratorを導入し、素材を生かすレシピ作りを現場で研究してほしい」(田巻氏)。なお、無償公開の期間については、市場の様子やユーザーからのフィードバックを見ながら判断するという。
今後のビジネス展開の戦略も聞いた。業務向けの本格的なVRシステムやMRシステムを導入するには、数百万円規模の投資が必要になるケースが一般的である。そこでキヤノンは、他社製デバイスでも動作するオープン化と基本機能の無償化を進めることで初期投資のハードルを下げ、まずは自社が使いやすいXRソフトウェアを提供しているという認知を広げるとともに、市場でのシェアを獲得することを目指す。
また、MREAL Collaboratorを軸として、XRソフトウェアの利用料ビジネスを見据えて、製品を育てる方針だ。「ハンドトラッキングやコントローラーといった操作方式の違いや、広い視野角が得意なもの、細かい部分を高精細に確認できるものなど、XRのハードウェアにはそれぞれ異なる特徴がある。用途に応じてさまざまなタイプのデバイスを使い分けながらも、同じソフトウェアで運用できる利点を届けたい」(角田氏)。また、XRの活用が進む中で、仮想シミュレーションにおいてミリ単位の精度や高精細なパススルー体験が求められる場面も想定される。そうした際に、キヤノンのMREALが持つ強みを生かし、自社製ハードウェアの導入へと移行する需要も期待しているという。
対象の市場領域は、従来の製造業に加えて建設業や医療、イベント、教育、販売店、B2C領域への拡大も視野に入れており、さまざまな場所や用途での3Dデータの利活用を促進していく構えである。
「今回のMREAL Collaborator提供やマルチデバイスへの対応をきっかけとして、現場におけるXRの活用がさらに拡大し、人手不足の解消や属人化といった課題を解決する一助となることを期待している」(田巻氏)
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