取適法の施行から3カ月が経過 企業はどのようなことに課題を感じているのか製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

Sansanはメディア向けの勉強会を開催し、2026年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)における企業対応の実態について説明した。

» 2026年04月09日 07時30分 公開
[坪田澪樹MONOist]

 Sansanは2026年3月30日、オンラインでメディア向けの勉強会を開催し、同年1月に施行された中小受託取引適正化法(取適法)における企業対応の実態について説明した。

取適法の概要と課題について

 取適法は独占禁止法が派生したような法律体系となっている。取引上の地位を優越した事業者(基本的には中小企業)に対して、委託取引に関する乱用行為など不当な行動をしないように取り締まる法律である。

 大企業は中小企業と比較すると交渉力が強いことがほとんどであり、この交渉力の格差を利用して中小企業に不当な利益を押し付けないようにするため、取適法にのっとった取引が義務付けられている。阿部・井窪・片山法律事務所 弁護士の松田世理奈氏は「日本企業は非常に中小企業が多い。そのため、大企業が中小企業に対して搾取や乱用行為をしないように制定されている法律である」と語る。

取適法の詳細について[クリックして拡大] 出所:Sansan

 取適法は「取引条件の明示や取引記録の作成/保管」「適正な報酬の支払期日の設定」「乱用行為の禁止」の合計3つの観点で規制する法律である。

 取引条件については、所定の事項は必ず明示しなければならないと法律で定められており、「条件」「納期」「ボリューム」「単価」といった内容を明らかにしなければならない。支払期限については、納品から60日以内に報酬を支払わなければならず、遅れた場合は遅延利息を支払う必要がある。

 従来は資本金だけを注視すれば問題なかったが、今回の改正によって「従業員」の区分も新たに追加されたことにより、取適法の適用対象を選別する際に大きな課題がいくつか生じている。

取適法の適用対象について[クリックして拡大] 出所:Sansan

 1つ目は取適法の適用対象の拡大だ。従業員に関する要件について、取引先の従業員数をどのように把握すればいいのかが分からない企業が多く存在している。委託者の従業員数と受託者の従業員数について確認し、規模の要件を満たすかどうかによって取適法適用の有無が変わる。そのため、取引先の従業員数を正確に把握しなければならないという課題が発生している。

 また、個別の発注をするたびに、毎回取適法が適用されるのか選別する必要がある。「例えば、年初に発注した案件に関しては取適法の適用がなかった会社でも、その後に受託者側がリストラされて従業員数が減った場合は、年度の途中から取適法の適用対象になってしまう場合がある。このように、変動する従業員数要件を適切に把握/捕捉して日々の業務に当てはめるという部分において、企業側からすると非常に悩ましい問題となっている」(松田氏)。

従業員基準の詳細[クリックして拡大] 出所:Sansan

 2つ目は価格協議に関する規制強化だ。新しい規制では、業務委託の給付に関する費用の変動が生じた際に、中小受託事業者からその変動に関わる協議を求められた場合、委託側は協議に応じる必要がある。協議に応じた上で、中小受託事業者が求めた項目について、必要な説明や情報を提供して代金などを決めなければならない。「条文上は禁止行為として書いてあるので、裏を返すとこれと逆のことをやってくださいという規制になっている」(松田氏)。

価格転嫁の新規制について[クリックして拡大] 出所:Sansan

 3つ目は法改正に伴うその他運用の見直しだ。今回の法改正により、適用対象が一部の物流委託や製造委託にも拡大している。取引条件の明示に不備があると往々にして乱用行為、禁止行為に抵触することがあり得る。そのため、取引を始める際には取引条件の明示に不備がないかを改めて確認する必要がある。製造業を中心に問題となっている“取引先での金型の無償保管”など取引にひも付くコスト負担に関しては、明確な書面による合意を結んでいるかを確認することが重要だ。

 松田氏は「取引条件の明示について、業界によっては具体的な取引内容や根本的に何を委託するかという部分について、口頭で済ましている企業も存在している。根本的な取引条件が不明確になってしまうと、委託のスコープが分からなくなる。そのため、受託側のタダ働きが誘発される可能性がある」と分析する。

取引条件の明示義務について[クリックして拡大] 出所:Sansan
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR