4つ目〜6つ目はガバナンスの不備を指摘している。永守氏をはじめ一部に権限が集中し過ぎていたこと、高い目標設定と目標未達を許容しない企業風土があったことから、真実の姿を管理する正しい動きが起こりづらい状況が生まれていた。そのため、組織としてのガバナンスはあらゆる意味で効いていない状態となっていた。
過去には、高い目標をあたかも達成しているかのような月初速報値が「月次業績」として取締役会に報告される慣行がありました。しかしながら、四半期での財務実績値との乖離(かいり)があまりにも頻繁に生じ、取締役の混乱を招く懸念があったことから、2023年1月以降は四半期での財務実績値のみを取締役会に報告するルールとなり、それ以降は月次での業績に関する情報は取締役会に報告されていませんでした。
また、執行側で把握されたコンプライアンス違反等の重要なリスク情報についても、取締役会への報告は十分には行われていませんでした。以上のように事業の実態に関する情報やリスク情報が不足している状況において、取締役会が監督機能を十分に発揮できない状況となっていた可能性があります。
こうした動きが組織として当たり前となっていたことから、本来、不正のディフェンスラインとして機能すべき経理部門が利益最優先の意識に侵食されていたという。
本来、内部統制の実効性を確保するためには、各ラインの役割と独立性を明確にしつつ、実効性の高いガバナンスを実現するスリーラインディフェンス体制を構築する必要があります。第2線である経理部門は、第1線である事業部門から独立した立場を保持し、第1線の活動を牽制、支援する役割を果たすことが期待され、第3線である内部監査は、独立した立場で、内部統制の有効性をモニタリングすることが期待されています。
この点、当社グループでは、多くの経理部門と事業部門が連携して、利益目標達成を共通目標としており、これにより当社およびグループ会社の経理部門にも短期的な利益最優先の意識が侵食し、経理部門の第2線のディフェンスラインの実効性を弱めていた可能性があります。
同様の傾向は、今回会計不正が頻発したグループ会社の管理体制にも及んでいる。ニデックでは多くのM&Aを行ってきたが、買収した企業の管理について統一した体制はなかったという。こうした点も不正の温床となった。
具体的には、日本国内における買収先(国内グループ会社)は、業績管理を含めて当社グループ会社事業管理部が管理を行う一方、国内グループ会社による海外における買収先は、当該国内グループ会社が管理を行い、当社事業本部が担当する買収先企業は、国内であるか海外であるかを問わず、当該事業本部が直接管理を行ってきました。
このように、買収先によって管理の所管部署が異なり、管理のレベルや手法も所管部署に委ねられていたため、当社グループとして標準的なグループ管理体制を構築することができていませんでした。
これらを改善する取り組みとして、先述した6つの原因が発生しないような仕組み作りを進める方針だ。
まず、高すぎる目標設定と目標未達を許さない風土に対し、中期経営計画や事業計画の策定プロセスを見直し、トップダウンの目標設定ではなく、個々の事業本部やグループ会社が主体的に計画策定を行えるようにする。
さらに、経理機能の事業部門からの独立性を確保するために、経理機能と経営戦略実行のモニタリングなどを担う事業管理機能を分化し、事業本部や国内グループ会社の経理機能の管掌と人事権を経理機能に移管する。
企業風土の面では、企業風土の変革を推進する新組織(Culture Transformation Lab)を設置し、従業員からの意見を経営に伝達し、施策に反映していく体制を構築する。
ガバナンス面では、コーポレートガバナンスの強化として、取締役会における中期計画および事業計画、それぞれの進捗に関する審議や報告の機会を明確に設定する。さらに、重要リスク情報の共有体制を整備することで監督機能の強化を行う。また、監査等委員会の実効性向上のために、内部監査結果の報告や執行役員との意見交換の強化、三様監査(監査役監査、会計監査人監査、内部監査)による意見交換を新しく実施する。
内部監査については、社長への報告に加え、監査等委員会への定期的な報告を行い、三様監査を含め、監査等委員会へグループガバナンスの観点で対応が必要なリスクを適時に報告し、第3線のディフェンスラインを強化する。また、従来の会計領域の業務監査および内部統制に限定された監査領域を拡大し、グループ全体のガバナンスを俯瞰的に検証する。
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