飛躍するXilinx、AMDとの因縁も既に始まっていた!?プログラマブルロジック本紀(6)(2/3 ページ)

» 2026年01月05日 06時00分 公開
[大原雄介MONOist]

AMDによるMMIの買収でゴタゴタ、創業者のFreeman氏が逝去

 当初AMDは、MMIを買収したことでXilinxのFPGA(というか当時の名称ならLCA[Logic Cell Array])を販売する気満々であった。しかしながら、Vonderschmitt氏は当時のAMDの姿勢を好ましく思っていなかった。

 これもCartar氏によれば「当時のAMDには、(自社のパートナーが)契約した顧客を呼び出し、より有利な条件でビジネスを奪い取るような前歴があった。AMDは規模が大きかったため、そうしたことを行う余裕があった」と回顧する。まぁ当時AMDを率いていたSanders氏(Walter Jerry Sanders III)は、そもそもそういう人物であったのは周知の事実で、これは驚くべきことでもない。そこでVonderschmitt氏はAMDに乗り込み、AMDがFPGA市場で利益を得る最善の方法は、AMDがFPGA市場に参入するのではなくXilinxの株を購入し、市場開拓はXilinxに任せるべきだと説いた。最終的にこの説得に納得したSanders氏はFPGAの参入を中止し、Xilinxの株を購入した。

 余談だが、この買収に先立ちXilinxとMMIのセカンドソース契約が結ばれるにあたり、MMIには5年間の特許使用権が付与されていた。ところがこの特許使用権には、MMIが買収された場合は無効となるというオプションがついていなかった。そこで、AMDとの交渉に当たり、その特許使用権そのものはAMDが保持できるが、その権利を5年間行使できないようなオプションを苦労して潜り込ませたらしい。5年あればXilinxは技術的に十分先に進むことが可能であり、そうなればAMDがその特許を使って製品展開を始めようとしても追い付けないだろうというもくろみだったそうで、実際そういう結果になった。

 もっとも、この交渉にはそうとう時間がかかったらしく、1989年にXilinxはAMDの株式20%を、10%のプレミアを付けて購入することで決着が着いたようだ。ちなみにXC3000シリーズのセカンドソースは、最終的にヤマハに製造を委託することになった。

 それはそれとして、1987年にXC3000シリーズが発売されてからは、Xilinxの売り上げは少しずつではあるが上昇していった。理由は幾つかあるが、XC3000シリーズだと最大9000ゲート相当になるから、小規模なゲートアレイを置き換えるに十分な規模になる。こうなると、初期費用がはるかに安く(ロジック回路の設計コストそのものは減らないが、ゲートアレイ製造コストと製造期間は圧倒的に短縮される)、生産量次第ではトータルコストでも安上がりになる。また、設計完了後に問題が発覚した場合でも対応が可能である。

 こうしたメリットが評価され、次第に顧客数が増えていく。1988年度(1989年3月末)の決算では売上高が3050万米ドルとなり、初の純利益292万米ドルを計上し黒字転換する。翌1989年度には売上高5000万米ドル/純利益600万米ドルに増加している。その1989年度にはIPO(新規株式公開)も果たしている。先に触れたAMDの株式20%の購入は、このIPOで原資を確保できたからこその技ともいえる。

 1989年10月には、創業者であるRoss Freeman氏がまだ41歳という若さで逝去する。当時Freeman氏はエンジニアリング担当副社長としてハードウェアとソフトウェアの両方を統括しており、早急に代わりの人材が必要になった。最終的にCartar氏がその役目に就き、最後にはCTOになる。なおFreeman氏は17年後の2006年、National Inventor's Hall of Fame(全米発明家殿堂)入りを果たしている。同氏の功績を考えれば当然であろう。

 この後Xilinxはより大規模なXC4000シリーズの開発に着手し、1990年に発売する。最大2万5000ゲート相当(図7)までラインアップされ、CLBの構造もさらに複雑になった(図8)。

図7図8 (左)図7 The Programmable Gate Array Data Book(1991年版)より。なぜかXC4000ファミリーの詳細はここには記されていない。ここにはXC4020(2万ゲート相当)までが示されているが、後でXC4025(2万5000ゲート相当)が追加された(右)図8 XC4000, XC4000A, XC4000H Logic Cell Array Families Product Descriptionより。2つの独立した4入力Function Generatorがまずあり、その結果を次のFunction Generatorが受けるという構造に進化した[クリックで拡大]

 さらにこのXC4000シリーズ発表の後、XilinxはXC3000シリーズのラインアップを以下のように強化した(図9)。

図9 図9 ハイエンドはXC3195/XC3195A(484CLB)になった。ちなみにこのころゲート換算の計算方法を変更したようで、XC3090(従来だと9000ゲート相当)は5000〜6000ゲート相当とされ、XC3195/XC3195Aは6500〜7500ゲート相当になっている[クリックで拡大]
  • XC3000シリーズ:最大125MHzまで動作速度を向上
  • XC3000Aシリーズ:XC3000シリーズの拡張版。インターコネクトの強化や使いやすさの向上などが図られた
  • XC3000Lシリーズ:XC3000Aシリーズの低消費電力版。3.3Vで稼働する
  • XC3100シリーズ:XC3000シリーズの高性能版。最大270MHzまで動作周波数させ、またCLBを増強したSKUを追加
  • XC3100Aシリーズ:XC3000Aシリーズに、XC3000シリーズと同じ性能向上策を施したもの

 これらの改良というか変更は、セイコーエプソンならびにヤマハに次ぎ、他のFabも検討対象に入れたことが大きいようだ。XC4000シリーズの開発に当たり、日本だけでなく欧州にも製造拠点を持つことが必要と考えたXilinxは、当初AT&T Microelectronicsと契約を結び、同社がパイロットメーカーになる予定だった。

 ところが同社との関係はうまくいかず、結局XilinxはAT&Tとの契約を破棄。XC4000シリーズの初期ロットは再びセイコーエプソンに委託することになった(この関係で出荷が数カ月遅れることになったらしい)。この状況を鑑みてか、Xilinxは複数の先端プロセスを持つFabにXC3024の製造を委託して、製造能力をテストしたらしい。Cartar氏によれば10〜15回のテープアウトをしたというから、相当なものである。もちろんこの全てでうまく行ったわけではないが、結果が良かったFabを複数選択肢として抱えることができたのは、生産量増加とラインアップ増強の両面で大きなメリットとなった。

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