近年、半導体の設計はより複雑になっており、最適なタイミングで供給するための開発期間の短縮に対するニーズも強くなっている。必要となる計算資源を適切に供給/維持することが難しくなっているのが現状だ。AWSジャパン エンタープライズ技術本部 ハイテク&ヘルスケア・ライフサイエンス部 シニアソリューションアーキテクトの野間愛一郎氏は「大規模なシミュレーションを伴う工程では大量の計算リソースが必要になる。オンプレミス環境でのサーバ調達に数週間〜数カ月かかるため、計算リソースの需要がキャパシティーを超過してしまい、結果としてプロジェクトが遅延するなどさまざまな問題が起きている」と述べる。
これらの課題に対して、AWS環境を活用することで同じワークロードを短時間に集中的に処理でき、開発期間を短縮して製品の市場投入時期を早めることができる。これにより、需要に応じたリソース提供が可能で計算資源の開放を待つ必要がなくなるため、コスト最適化に寄与する。
AWSでの時間に基づくコストの考え方は、面積が同じであればコストも同じという考え方である。「例えばシミュレーションや検証のために1台のサーバを100時間使用するのと、100台のサーバを1時間使用するのであれば、それは同じコストになる。後者を選んだ場合は、結果的に作業を99時間短縮でき、開発スピードにも直結する」(野間氏)。
勉強会では半導体開発におけるAWSの導入事例も紹介された。ソニーセミコンダクタソリューションズグループ内では、製造歩留まりを維持するための取り組みとして、「AWS EC2」や「Amazon SageMaker AI」を活用した分析環境を構築し、業務効率化や従来ではできなかった新たな解析/可視化手法を実現している。野間氏は「この事例はクラウドの経験がなく手探り状態でPoC(概念実証)をスタートし、合計6カ月という短期間で本番運用を開始できた。このように分析したいという現場のアイデアをすぐに形にできる、クラウドならではのメリットがある」と強調する。
地政学リスクを考慮して拠点を世界に分散させるという開発体制を取る企業も増えており、標準化したプロセスに基づきつつ、異なるタイムゾーンの国や地域をまたいで24時間体制で開発を継続できる環境を整える必要性が高まっている。それに伴い、知的財産を安全に共有できるようにするためのセキュリティ対策も合わせて実施する必要がある。
これらの課題に対してもAWSの技術を活用することで、セキュリティを担保しつつ組織やロケーションを跨ぐグローバルな環境を整えることができる。多数のパートナー企業との連携の場をAWSの単一基盤上でパートナーごとに独立したネットワーク環境(VPC)の構築が可能だ。
また、離れた拠点間でデータのやりとりをする場合は、AWSが保有する専用のネットワーク「AWS Backbone」を活用することで、一般のインターネットよりも高速で安定した通信を実現できる。これにより、組織やロケーションの壁を越えてセキュアな環境を簡単に構築できる。
近年では、量子コンピュータを利用して現在の暗号化技術を解読する仕組みが存在しており、PQC(ポスト量子暗号)へ移行する企業が増えている。半導体の設計データや製造データは企業の最重要資産であるため、長期的な保護が必要不可欠だ。そのため、将来の量子コンピュータ時代に備えた暗号化が必要である。
この課題に対してAWSは、PQCへの移行を積極的に進めることで対応している。公開APIのエンドポイントやVPCサービスといったAWSのインフラストラクチャ部分は自動的にPQC対応をしていく。野間氏は「AWSはこのPQCへの移行を当事者として進めており、顧客と協力してセキュリティを強化している」と述べている。
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