進化を続けるパナの“画竜点睛”の通信規格Nessum 通信インフラとして需要が拡大製造業IoT(2/3 ページ)

» 2025年12月18日 06時15分 公開
[坪田澪樹MONOist]

Nessumは“ピースを埋める技術”として進化を続ける

 パナソニックHD 技術部門 事業開発室 Nessum部 事業創生課 シニアエンジニアの川畑直弘氏は「NessumがイーサネットやWi-Fiといった他の通信方式と競合するのではなく、これらの通信方式がカバーしきれない部分を“ピースを埋める”形で、顧客のネットワーク最適化を実現していきたい」と述べる。ピースを埋める技術として、Nessumは大きく分けて「マルチホップ技術」「フレキシブルチャネル技術」「セキュリティ機能の強化」の3点で進化を続けている。

 マルチホップ技術は国際標準規格であるITU-T G.9905で規格化されている、1対1では届かない場所にデータを自動で中継する技術である。この技術を活用することで、最大10ホップで数kmの伝送が可能となり、1つの親機で最大1024台の子機を管理できる。これにより、大規模なビルや工場でもネットワーク構築が可能だ。

マルチホップ技術の概要[クリックして拡大]出所:パナソニックHD

 また、送信したデータ信号の伝送路が長くなるにつれて、受信側では高周波数側の信号レベルが減衰してしまう課題に対しては、フレキシブルチャネル技術を活用。低い周波数に信号のエネルギーを集中させることで、長距離での伝送を可能としている。

フレキシブルチャネル技術の概要[クリックして拡大]出所:パナソニックHD

 川畑氏は「Nessumでは標準モードの2M〜28MHzの信号帯域を2倍、4倍に広げることで500Mbps、1Gbpsといった高速通信が可能になる。また、信号帯域を2分の1、4分の1に狭めることで伝送距離を1.5倍、2倍と伸ばすことができる」と述べる。

通信帯域による違い[クリックして拡大]出所:パナソニックHD

 近年、高度なセキュリティ機能が求められる中、Nessumは「AES 128ビット」「適応変調」の2種類の暗号方式と国際標準規格で規定化している「IEEE 802.1X」認証機能でセキュリティを強固にしている。

 AES 128ビットは無線LANなどでも使用されている強力な暗号方式だ。暗号の組み合わせが2128パターンあり、現時点で実用的な攻撃方法は存在しないといわれている。

 適応変調は各端末間で異なる伝送路周波数特性に合わせて変調パターンを最適化する技術である。このパターンが異なるとデータを全く読み取れなくなり、最大7432パターンの中から情報を盗聴することは極めて困難である。

セキュリティ機能の概要[クリックして拡大]出所:パナソニックHD

 IEEE 802.1Xは外部の認証サーバを利用して、その認証を通過した端末のみがネットワーク参加に必要な暗号鍵を入手できる仕組みである。これにより、第三者の不正侵入を防ぎ、セキュリティをより一層強化できる。

IEEE 802.1Xの概要[クリックして拡大]出所:パナソニックHD

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