REDのサイバー対策要件を実務に落とし込むための“ものさし”が、EN18031シリーズである[参考文献4]。条文上の抽象要求を、試験/評価/文書化が可能な技術項目に具体化し、適合すれば「適合推定(presumption of conformity)」を得られる。メーカーは同規格に沿って設計/試験/技術文書を整えることで、CEマーキングの根拠を体系的に整備できる。
機器がbotネット化や過剰トラフィックの発生源となることを防ぎ、ネットワークの可用性と健全性を確保する。
主な要求は、初期設定の堅牢化(初回の認証情報強制変更/不要機能の無効化)、アクセス制御(認証/認可/レート制限)、セキュア更新(署名検証/暗号化/ロールバック耐性/安全復旧)、トラフィック管理(フィルタリング/異常検知)およびログ/監査可能性である。
個人データの機密性/真正性/可用性を保ちつつ、プライバシー・バイ・デザイン/デフォルトを実装して不必要な収集や利用を抑制する。データ最小化と目的限定、保存/転送の暗号化、最小権限/RBAC、鍵管理と安全保管、処理の可視化と監査、保持期間の管理と匿名化/仮名化、ユーザー権利(閲覧・削除・エクスポート)への対応を求める。
取引の改ざんやなりすましを防ぎ、金銭価値の保全と取引の完全性や不可否認性を確保する。強固な認証(MFA 含む)と取引認可、セキュアブートと実行基盤の信頼性確立、改ざん検知と改ざん耐性、鍵管理(セキュアエレメントなどでの保護)、デジタル署名とメッセージ完全性検証、リプレイ防止/ロールバック耐性、セキュア更新と証跡管理である。
REDサイバーセキュリティ対策要件への適合を証明する方法は2つある。
EN 18031は、RED-DA(無線機器指令委任規則)のサイバーセキュリティ対策要件に対応する調和規格であり、同規格のAnnex B(参考)にIEC 62443-4-2: 2019とのマッピングを示す[参考文献5]。これにより、製造業者は既存のIEC 62443-4-2の実装や試験の証跡をEN 18031の適合立証の参考として活用することが可能となる。
ただし、適合推定は EN 18031 そのものへの適合で判断され、IEC 62443準拠のみでRED要件への適合が自動的に保証されるわけではない。
当社ではIEC 62443-4-2で培った基盤を活用し、具体的には、初回起動/初回ログイン時のデフォルトパスワード強制変更、脆弱性スキャンへの対応機能、DDoS対策としてのトラフィック制御などを新規に実装。さらに、更新時のデジタル署名検証と起動時のセキュアブートで真正性と整合性を担保している。これらの実装により、EN 18031の要求事項に適合している。
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