なぜNTTは「純国産」LLMにこだわるのか、専門知識を強化した「tsuzumi 2」提供開始人工知能ニュース(1/2 ページ)

NTTは従来モデルから機能強化したLLM「tsuzumi 2」の提供を開始した。日本語性能や特定業界の専門知識を向上しつつ、引き続き1GPUでの動作を可能にすることでオンプレミス環境への導入のし易さを維持した。tsuzumi 2をNTTグループのAI戦略の中核と据える。

» 2025年10月22日 08時15分 公開
[安藤照乃MONOist]

高まる国産AIへの期待

NTTの島田明氏 NTTの島田明氏

 NTTは2025年10月20日、東京都内とオンラインで会見を開き、自社開発の大規模言語モデル(LLM)「tsuzumi」を機能強化した、「tsuzumi 2」の提供を開始したと発表した。

 tsuzumi、tsuzumi 2は、海外製を中心とするオープンソースのAI(人工知能)モデルをベースにはしておらず、基盤モデルを一から構築するスクラッチ開発を徹底しており「純国産」であることを大きな特徴としている。

 同社が純国産LLMを開発する理由について、NTT 代表取締役社長の島田明氏は、「近年、安全保障や産業競争力の観点から、各国で自国開発AI(ソブリンAI)への関心が高まっている。特に企業が持つ機密性の高いデータやノウハウが集約された“クローズド領域”において、各国固有の文化や言語に適したAI活用ニーズが拡大している」と説明する。

 また、スクラッチ開発のメリットについては、「海外モデルに依存しない独自モデルとすることで、著作権や開発プロセス、ライセンスをコントロールし、外部環境の変化に左右されず安定的に提供できる」(NTT 執行役員研究開発マーケティング本部研究企画部門長の木下真吾氏)という。

 NTTは2023年11月にtsuzumiを発表して以降、生成AI関連の相談件数は国内だけで1800件を超え、受注も国内外で約1800件に達している。売り上げも増加しており、2025年度末には年間1500億円、2027年度には同5000億円超を見込む。

 島田氏は、「純国産の強みを生かし、進化させたtsuzumi 2をNTTグループのAI戦略の柱とする」と強調した。

 NTTの「tsuzumi」を中核とする生成AI関連の相談/受注状況 NTTの「tsuzumi」を中核とする生成AI関連の相談/受注状況[クリックで拡大]出所:NTT

「tsuzumi 2」は日本語処理性能と特定業界知識を強化

 tsuzumi 2では、主に2つの点を強化した。

 1つ目は「日本語処理性能の強化」である。日本語処理能力を測る複数のベンチマーク(知識、解析、指示遂行、安全性)を用いてtsuzumi 2をテストしたところ、同規模の海外製モデル(Googleの「Gemma 3」など)をほぼ上回る結果を示した。また、より大規模なモデル(OpenAIの「GPT-5」など)と比較しても引けを取らない性能であることから、コストパフォーマンスの面で優位性がある点をアピールした。

 会見で行ったデモンストレーションでは、契約書の不備チェックやニュースリリース原稿の自動添削をtsuzumi 2が処理する様子を披露した。

日本語性能を強化 日本語性能を強化[クリックで拡大]出所:NTT

tsuzumi 2による契約書の不備チェック tsuzumi 2による契約書の不備チェック[クリックで拡大]出所:NTT
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR