ティアフォーの自動運転とAIを支える「高火力」なGPUサーバ自動運転技術(1/2 ページ)

自動運転開発の“総合商社”を目指すティアフォー。AIの先端技術を活用しながら、各地で自動運転車を走らせるだけでなく、自動運転AIのデータ駆動型開発の実現も目指している。ただ、学習や推論でAIを進化させるには、開発を支えるGPUサーバの「火力」も重要だ。

» 2025年10月08日 06時15分 公開
[齊藤由希MONOist]

 自動運転開発の“総合商社”を目指すティアフォー。AI(人工知能)の先端技術を活用しながら、各地で自動運転車を走らせるだけでなく、自動運転AIのデータ駆動型開発の実現も目指している。ただ、学習や推論でAIを進化させるには、開発を支えるGPUサーバの「火力」も重要だ。

 ティアフォーは、さくらインターネットが提供する生成AI向けクラウドサービス「高火力」シリーズを採用している。GPUサーバは高性能だが高価で、大電力を消費するため、構築や運用のハードルは非常に高い。また、性能に必要な規模を担保することや、ネットワークなどバックエンドの仕組みも必要だ。

 高火力シリーズを活用することで、ティアフォーはインフラの構築コストが大幅に低減できたという。契約から1日で立ち上げることができ、スピーディーな導入や安定した動作もメリットとなった。今後の機能拡張の提案やシステムフェイル時の対応などで手厚いサポートも受けられているとしている。

自動運転に必要なソフトウェアをプラットフォームとして提供[クリックで拡大] 出所:ティアフォー

自動運転車とAI

 ティアフォーは2016年以降、全国38都道府県の97市区町村で自動運転車の実証実験を行ってきた。その知見を生かし、自動運転車による移動サービスの事業化にも取り組んでいる。

 直近では、長野県塩尻市でレベル4の自動運転バスの運行許可を取得して実証実験を行った。塩尻駅と同市役所を結ぶ短いルートではあるが、歩行者や他の車両も混在する中で、ドライバーレスで時速35kmまで速度を出した。実際に乗客も乗せた。こういったケースを横展開しながら、自動運転車の台数やサービスの拠点、車種を拡大していく。

ティアフォーが実施した自動運転車の実証実験[クリックで拡大] 出所:ティアフォー

 自動運転車は、周囲や自車が動こうとしている経路の周辺にいるさまざまなクルマやバイクをセンサーで捉え、認知→判断→制御のループを100ミリ秒単位=1秒に10回の頻度で繰り返す。対向車や歩行者など認識すべき物体は非常に多く、その中で自車がいかに安全に法律を守るかを考えなければならない。しかし、車両に搭載できるコンピュータのリソースも限られており、AIが性能のカギを握る。

 これまで、AIが使われてきたのは「認知」の領域だった。複雑な状況に対応するため、クルマはどういう形をしているのか、信号機はどんな色なのかを逐一AIに教えていくのは難しい。正解のデータを与えて、ディープラーニングで大量に学習させることでうまく認識し、正解を出せるようになってきた。

 量産されている市販車にも採用されており、ディープラーニングのアーキテクチャをシンプルにする代わりに高速に動作するアプローチがとられている。近年はさらに複雑な環境の認知を実現するため、認知が難しい部分をAIに置き換えていく動きがある。認識技術を高度化して周囲360度や200〜300m先の物体まで認識しなければならない。認知だけでなく、判断や制御のサイクルも内包するエンドツーエンドAIというアプローチもある。複数もしくは単一のAIモデルで置き換えて、全体を一気に最適化するという考えだ。

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