ここまで述べた統合レイヤーを起点に、LOOKOUTでは自律避航計画モジュールで推奨航路を提示する。自船の旋回半径や速力、検出された危険脅威度、そして海上法規(デモではCOLREG)を同時に考慮し、規則適合チェックとリスク加重パススコアリングをリアルタイムで実施して妥当性を担保する。時間軸は(システムが対処できる負荷に合わせて)即時〜30分超まで可変で、新規脅威が出現しても継続して代替航路を立案できる。
説明会では、避航計画を立案するときの優先順位は状況に応じて船速、燃料効率、操船の滑らかさ、最小航路などを切り替えられるとした。出力は標準化したJSONで、分類ラベル、距離、航路の信頼度、相対方位、速度ベクトル、信頼度、脅威ランク、目標CPA(最接近距離)/TCPA(最接近時間)までエクスポートする。データの外部出力によって提案された避航操船の妥当性もログで検証可能とした。
LOOKOUTのマンマシンインタフェースは、カメラ映像上にハザードや前方船、AIS由来のメタデータを重ねるAR(拡張現実)オーバーレイが基本だ。危険度や重要度に応じて画面構成が動的に変化し、右舷外側から高速接近する小型艇など見落としやすい対象が現れた瞬間に、注意喚起がポップアップする。固定レイアウトではなく“必要なときに必要な情報を張り出す”設計は、ヒューマンファクターの観点でも適切だという。
接岸と離岸では、カメラ映像を用いて距離と方位を連続して算出する。単眼深度で1m未満の距離精度、±2度の方位推定、接岸する岸壁や桟橋の自動検出とトラッキング、船体挙動に基づく運動量予測を組み合わせ、可変しきい値の警告で“船体を当てない”操船を支援する。加えて、Return-to-Home(事前に設定した接岸位置への最適復帰)や風流れ補正ガイダンスにも言及している。これらの定量情報は、そのまま自動接岸操船への入力要素として利用可能だ。
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