FIRAのサービスでは600種類もの異能を用意した。専門的な財務ファイナンス知識を持つ「スーパーCFO」や革新的な発想が得意な「Dr.革新発想」をはじめ、経営学、経済学、心理学、IR、財務、人財、データサイエンス、コンセプトづくり、ウェルビーイング、歴史、科学、思想、哲学などの専門性や価値観を持つ異能の他、メンタルトレーナーの久瑠あさ美氏、株式会社ベアーズ取締役副社長の高橋ゆき氏、アスリートの為末大氏、著述家の山口周氏、矢野氏自身など実在のエキスパートも含まれている。なお、これらの実在のエキスパートの異能は、2024年3月に発表した各界トップランナーの考え方を生成AIと融合させる新技術「Bunshin」に基づいている。
矢野氏は「当初は30種類の異能で研究開発を進めていたところから、異能を108個に増やすとより深みのある回答が得られるようになった。そこで、サービス提供に向けて600個に増やすことにした」説明する。
なお、ユーザーのテーマ設定に対して多数の異能が参加する熟議では、司令塔となるファシリテーターが重要な役割を果たしている。ファシリテーターが、議論の方向や場の盛り上がり、感情、発言者や発言の順序、長さなどを調整することで、異能たちが時に刺激し合い、時に対立し、時に協調しながら、異能たちがその場で問いと思考をブラッシュアップさせ、自己成長を促す仕組みになっている。
AIに質問して得られる回答について、FIRAとグローバルで利用されている主要な13種類の生成AIモデルの性能比較を行った。評価指標である「経営支援スコア」は、リスク、財務、投資、人事、技術、営業、変革などの10種の経営テーマに対するAIの回答を、驚き/奥深さ/メタ認知などの7個の評価項目について、生成AIが客観的に8段階でブラインド評価する「LLM-as-a-Judge法」という手法に基づいている。その結果、FIRAの回答の偏差値は、主要な生成AIを27ポイント上回り1位となった。
FIRAは2025年5月から、日立をはじめ製造業や銀行業、建設業などで先行利用が開始されており、中期経営計画、営業企画、事業構造変革などの経営課題をテーマに、会議前の壁打ちなどで日常的に活用されているという。矢野氏は「これまで生成AIは、定型業務やデジタル化/DX(デジタルトランスフォーメーション)施策の立案、プログラミングなどの専門業務などに利用されてきたが、多くの知識量が必要で確たる正解がない経営課題の解決への適用は難しく、従来はコンサルに任せるのが一般的だった。AIによって創造性を生み出せるFIRAは、1カ月当たり300万〜1000万円かかるコンサルよりもはるかに安価に経営課題の解決に貢献できるだろう」と述べている。
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