横浜市立大学は、半導体PETを用いて脳悪性リンパ腫におけるMYD88遺伝子変異を非侵襲的に判定できることを明らかにした。個別化医療に向けた画像診断法として期待が高まる。
横浜市立大学は2025年7月30日、脳悪性リンパ腫(中枢神経系原発悪性リンパ腫:PCNSL)の重要な遺伝子異常であるMYD88変異を、半導体PET(digital FDG-PET:dFDG-PET)で高精度に予測できることを明らかにしたと発表した。
MYD88変異はPCNSLの多くに認められ、糖代謝経路である解糖系を活性化することでPCNSLの増殖が促される特徴がある。研究グループは、この変異に基づく代謝変化を非侵襲的に可視化するため、dFDG-PETと従来型aFDG-PETの画像データを比較し、55病変のFDG集積と遺伝子情報を解析した。
その結果、dFDG-PETを用いた34病変では、MYD88変異を有する腫瘍でSUVmaxやTBRが有意に高く、TBRのカットオフ値4.49で感度、特異度ともに88%を記録した。
MRIでは明確な差は出なかったが、dFDG-PETによる画像所見は、MYD88変異の独立した予測因子となることが示された。
さらに、RNAシークエンス解析により、MYD88変異型の腫瘍では解糖系の遺伝子発現が広範に上昇しており、画像診断結果と分子データが整合することが確認された。
今回の成果は、MYD88変異を迅速かつ非侵襲的に判別する画像診断法の開発に道を開くもので、今後の個別化医療の支援技術としての応用が期待される。
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