海外メーカーも同様のリニア搬送装置を国内で販売している。その中で、国産メーカーの強みをどのように発揮するのか。その一つに、三菱電機のサポート力を挙げる。「われわれにとって新しい製品だが、ユーザーにとっても新しい製品になる。立ち上げ方や使い方に分からないことがあった時に、海外メーカーとのやりとりに苦労されているケースがある」(伊藤氏)。
単体の供給だけではなく、設計支援などを含めたビフォーサービスから、負荷率計算や据え付け、立ち上げの支援、さらに予知保全や部品交換などのアフターサービスまで、一貫したソリューション提案を進めていく。「手厚いサポートが約束できる。まずは国内だが、アジア圏を中心に海外展開も考えている」(鈴木氏)。
サポート力だけでなく、各種の機能性も優れている。
各キャリアは三菱電機のサーボアンプ「MELSERVO-J5」の制御機能に対応している。キャリアに搭載される負荷が変化しても最適なサーボゲインを自動的に調整する「オートチューニング」や、任意のタイミングでゲインを切り替えることで状況に応じた最適ゲインを設定できる「ゲイン切換え」、キャリアに搭載したワークの振動を抑制する「制振制御」、停止時のオーバーシュートを抑制する「オーバーシュート抑制」などの機能で、高精度の位置決めを実現する。
キャリアのプログラミングはMELSERVO-J5と同様の方法でプログラミングできる他、複雑な動作パターンでもキャリア通過バッファーや衝突回避などのリニアトラック専用のモーション機能も活用することで容易に作成できる。特に、キャリア通過バッファーでは、トラック上に任意で設定したプロセスポイントを通過したキャリアを保存し、始動するキャリアの指定やトリガーに使うことで、キャリア軸No.を意識しないプログラミングが可能だ。
キャリアには新開発の金属製のホイールガイドを採用。樹脂製のホイールに比べて摩耗が少なく、モーター部のギャップ変動や、キャリアとモーターとの干渉リスクを低減する。
潤滑装置から転動面に適切な量の潤滑油を供給することで、転動体と転動面の間に油膜を形成し、メンテナンス間隔を大幅に延長する。また、緩和曲線レールを用いることで、直線部から真円部に入った時のキャリアへの衝撃を和らげ、振動を抑制する。
立ち上げの容易さも考慮した。組み付けは、隣接モジュールとのガイドレールの段差はボルトの締結のみで補正できる構造になっている。リニアトラックが組み上がった後も、キャリアの挿入、排出はキャリア脱着用レールを使えば簡単に行える。
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