製造業デジタルマーケティングの課題を「購買フローマップ」で解決する方法間違いだらけの製造業デジタルマーケティング(30)(2/3 ページ)

» 2025年08月06日 07時00分 公開

購買フローマップで現状の課題を整理する

 先ほどのケーススタディーにおける課題を、購買フローマップ上で整理すると以下のようになる。

購買フローマップによる問題点の整理 図2 購買フローマップによる問題点の整理[クリックで拡大] 出所:テクノポート

(1)認知/初期興味フェーズでの課題

  • コラムページから流入するユーザーが多いが、リード化できていない
    →技術コラムへのアクセスは多いものの、フォーム誘導や資料ダウンロードといった次のアクションが設計されておらず、見込み客の獲得につながっていない。

(2)技術課題認識〜解決策検討フェーズでの課題

  • 購買フロー中盤に向けたコンテンツがなく、ユーザーからのアクセスはほとんどない
    →解決手段を検討し始めた層に向けた導線やコンテンツが存在せず、検討段階のユーザーが離脱している可能性が高い。

(3)ナーチャリングフェーズでの課題

  • 形式的なメルマガを行っているが成果はない
    →メルマガがユーザーの検討段階や興味に応じた内容になっておらず、行動喚起(資料ダウンロード、製品比較、問い合わせなど)につながっていない。
  • MAはメルマガ配信でしか活用できていない
    →MAの本来の機能であるスコアリングやシナリオ設計、リード育成などが十分に活用されていない。

(4)検討終盤フェーズでの課題

  • 商談に至るユーザーのリード化方法が“問い合わせ”しかない
    →購買検討が進んだユーザーに対し、「資料請求」「製品比較表ダウンロード」「無料相談」などの中間コンバージョン手段が用意されておらず、機会損失が生じている。
  • 指名キーワードでの流入はあるが、製品キーワードでのSEO対策が不十分
    →製品ページへの流入が、ブランド指名検索に偏っており、汎用(はんよう)的な製品カテゴリー/用途ワードでの検索流入を取り込めていない。

購買フローマップで解決策を整理する

 次に、先ほど洗い出した課題を購買フローマップにマッピングすると、解決策は以下のように整理できる。

購買フローマップでの解決策の整理 図3 購買フローマップでの解決策の整理[クリックで拡大] 出所:テクノポート

(1)認知/初期興味フェーズ向け施策

  • プレスリリース/YouTube/SNS広告の活用
    →潜在層への認知を拡大し、技術コラムなどへの流入を促進する。
  • ホワイトペーパーの設置
    →技術コラム経由で流入したユーザーのリード化を狙う(購買フロー前半のユーザーをリード化する)。
  • 購買フロー前半のユーザー獲得施策の強化
    →ホワイトペーパーや初期課題整理に関する資料などを設置し、情報収集段階の見込み客を獲得する。

(2)技術課題認識〜解決策検討フェーズでの課題

  • 課題解決事例の掲載
    →課題キーワードでの流入数を増やすとともに、課題解決のための具体事例を紹介することで、検討フェーズの意思決定を後押しする。
  • 競合技術/製品との比較コンテンツの充実
    →競合技術/製品キーワードでの流入数を増やすことで、自社技術を認知してもらう。
  • 製品カテゴリーページの整備
    →製品キーワードでの検索流入を増やし、より詳細なページ(製品詳細など)への導線を構築する。
  • リスティング広告(購買後半層向け)
    →本格的な技術/製品の選定段階に入っている顕在層ユーザーを製品情報ページへ誘導する。

(3)検討終盤フェーズ向け施策

  • ダウンロード資料としてカタログの設置
    →製品詳細ページや導入事例ページなどからカタログのダウンロードにつなげ、リード獲得につなげる。
  • ウェビナーの開催
    →中盤〜終盤の購買段階にいるリードに向けて、商談化の機会を創出する。
  • HOTリードへのアプローチ
    →資料ダウンロードや閲覧行動のスコアリングに基づき、営業が個別フォローを実施する。

 このように購買フローマップを活用することで、現状のデジタルマーケティング施策における課題を可視化し、施策の抜け漏れを補完することが可能となる。

 導き出された解決策については、購買フローの後半、すなわち購買に近いユーザー層から優先的に対策を講じることで、短期的な成果が見込める。このアプローチは、施策全体の優先順位を整理する上でも有効である。

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