投資を抑制してきたシャープのブランド事業、今後は2倍以上の資金を投入製造マネジメントニュース(2/4 ページ)

» 2025年05月15日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

「構造改革」と「成長への布石」

 2024年度は堺ディスプレイプロダクトのパネル生産停止、グリーンフロント堺の主要資産売却、カメラモジュール事業や半導体事業の譲渡など、発表済みのアセットライト化をスケジュール通りに進めてきた。また、中小型ディスプレイ事業も、親会社である鴻海精密工業から亀山第2工場の買い取りの要望があり、2026年8月までに譲渡する方向で協議中だ。譲渡価格や受注済みの商品の供給など詳細は決まり次第発表する。

 ディスプレイデバイスは、車載やVR(仮想現実)/AR(拡張現実)などのXR製品、産業用に集中して事業を展開する。高付加価値商品の販売拡大により、2026年度には黒字転換を目指す。

 亀山第1工場と白山工場の2拠点体制で、亀山第1工場は車載用に特化する。超低反射、デュアルビュー、クリックディスプレイなどの開発を加速させる。ベトナムの実装拠点の生産能力も増強し、取引先が推進するサプライチェーン再構築を機会に受注を拡大する考えだ。白山工場は、XR向けの超高精細LCD、車載用の超低消費電力ディスプレイ、高画質なePosterなど高付加価値製品をマルチに供給する役割を担う。三重第3工場は試作ラインを残して縮小していく。

 なお、グリーンフロント堺の本社工場棟の売却により、2026年3月ごろをめどに大阪市中央区に本社を移転させる。人への投資の一環で利便性の高い立地に移る。

パネル生産拠点の選択と集中[クリックで拡大] 出所:シャープ
亀山第1工場と白山工場の役割[クリックで拡大] 出所:シャープ

2027年度に営業利益800億円

 シャープ 代表取締役社長 兼 CEOの沖津雅浩氏は「『目の付けどころがシャープでしょ』の通り、他社とは違うシャープらしい商品を生み出してきた。違いを生み出す力こそがシャープらしさであり、競争力の源泉だったが、経営危機やマネジメントの変化を背景にシャープらしさが失われつつある。2024年6月に社長に就任して以来、シャープらしさを取り戻すことを呼びかけてきて、少しずつ社内にシャープらしさが再び浸透しつつあるように感じている」と語る。

 今後は「目の付けどころ」「特長となる技術」、鴻海精密工業との協業によって力を入れてきた「スピード」の3つをベースに、ブランド事業が対象とする暮らしや働く場を変えていく。そこで、2027年度に向けて、ブランド事業のグローバル化と事業変革の加速、持続的な成長基盤の構築、成長をけん引するマネジメント力の強化に力を入れる。

 2027年度には、全社の営業利益を800億円に引き上げることを目指す(2024年度は273億円)。また、ブランド事業で営業利益率7.0%以上を目標にする。

2027年度の財務目標[クリックで拡大] 出所:シャープ

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