デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第26回は自社の特徴を効果的に伝えるために欠かせない事業領域の「言語化」をテーマに、有効なアプローチを紹介する。
受託加工業において、企業の成長を左右するのは「技術力」だけではない。高度な加工技術や最新設備を保有していても、自社の特徴を効果的に伝えなければ、顧客の信頼を獲得することは困難である。そこで求められるのは、事業領域を「言語化」し、誰に対しても分かりやすく発信することである。
本記事では、受託加工業特有の「現場力」やノウハウを、一目で理解できる形に整理するための当社独自のフレームワーク「TPMモデル」を紹介する。もともと用途開発を目的としてADL(Arthur D. Little)が開発したMFTフレームワークに着想を得た本モデルは、受託加工業向けに再構築し、Webマーケティングの実務現場で蓄積されたノウハウを効果的に整理するためのツールとなっている。
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Webマーケティングや営業活動を効果的に展開するためには、まず事業内容を明確に整理することが不可欠である。従来、多くの企業は【受注】→【図面確認/工程設計】→【加工】→【検査】→【梱包(こんぽう)/納品】というバリューチェーンの流れを用い、どの工程で付加価値が創出されるかを把握してきた。この手法は、工程ごとの役割や強みを浮き彫りにする上で有用であるが、実際のビジネス現場で求められる視点はそれだけではない。
例えば、単に工程を整理するだけでは、以下のような重要な要素が十分に捉えられない。
また、マーケティングにおける一般的な分析ツール(STP、3C、SWOT、PESTなど)は、業界全体や市場環境を把握するには適しているが、受託加工業固有の「現場力」や技術、設備、ノウハウといった要素を総合的に可視化するには、やや使いづらい面がある。
以上の背景から、各要素を体系的に整理し、事業の強みを戦略的な発信に結び付けるためには、受託加工業専用にカスタマイズされた独自のフレームワークが求められる。
TPMモデルは、技術(Technology)、機能/パフォーマンス(Performance)、市場(Market)の3軸で自社の現状を多角的に分析し、より具体的で説得力のある情報発信を可能にするものである。
インターネットやSNSの普及により、企業は多様な情報発信チャネルを持つようになった。しかし、情報があふれる現代においては、単なる「加工スペック」や「設備数」の羅列だけでは、顧客に響くことは難しい。
顧客が重視するのは、「どのような課題を、どのような方法で解決できるのか」である。TPMモデルは、この「課題解決」を前面に押し出すための強力なツールである。自社の技術やノウハウを「見える化」することで、顧客に対する訴求ポイントが明確になり、営業活動やWebマーケティングの効果を大幅に向上させることが可能となる。
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