　こういった状況を踏まえて、倉本産業は「機能性ダイシングシート」「帯電防止粘着シート」「特殊両面テープ」を開発中だ。同社は「新機能性材料展2025」（2025年1月29～31日、東京ビッグサイト）に出展し、これらの開発品を披露した。ダイシングシートとは半導体製造の際にウエハーやワークを固定するための粘着テープを指す。

半導体製造工程（テープ使用工程：後工程）［クリックで拡大］出所：倉本産業

耐熱タイプとUV-LED対応タイプは製品化可能な段階

　機能性ダイシングシートは半導体製造工程で使用可能なUV硬化タイプのダイシングシートで、上から順に各種フィルム（PEN、PET、PVCなど）、UV硬化粘着剤、剥離フィルムから成り、「耐熱タイプ」と「UV-LED対応タイプ」の2種類がある。

機能性ダイシングシート［クリックで拡大］出所：倉本産業

機能性ダイシングシートの構成［クリックで拡大］出所：倉本産業

　耐熱タイプは260℃で1分間にわたり加熱した後もUV照射により粘着力が低下する。倉本産業の担当者は「耐熱タイプはリフローはんだ工程で260℃に加熱してもダイシングシートとして機能する。そのため、リフローはんだ工程とダイシング工程で粘着テープを使い分ける必要がない」と話す。

　UV-LED対応タイプはLEDタイプ（波長365nm）のUV照射装置に応じる粘着剤を用いたダイシングシートだ。「海外ではLEDタイプのUV照射装置に対応したダイシングシートは普及しているが、日本だと設備の問題で利用が広がっていない。LEDタイプのUV照射装置を通常のダイシングシートに利用すると硬化不良が起こるケースも多いと聞く。そこで、当社で検証した。その結果、波長365nmのLEDタイプUV照射装置を通常のダイシングシートに利用したところ、硬化に時間がかかった。こういった課題を踏まえて、波長365nmのLEDタイプUV照射装置により短時間で硬化し粘着力が低下するUV-LED対応タイプを開発した」（倉本産業の担当者）。

　同社は両タイプともに開発中としているが、顧客が決まり次第、製品化できる段階にあるという。

基材がPENフィルムの耐熱タイプ（上）と基材がPETフィルムのUV-LED対応タイプ（下）の性能を示したグラフ［クリックで拡大］出所：倉本産業

　帯電防止粘着シートは、使用時の静電気対策として帯電防止性を付与した粘着シートで、上から順に、50μmのPETフィルム、25μmの帯電防止粘着剤、剥離フィルムで構成される。同シートは被着体への汚染性もない。用途としては、ICチップなどの静電破壊を抑えられるダイシングシート、静電気対策が必要な半導体用工程シート、剥離帯電対策が必要なクリーンルーム用ラベルを想定している。