EHDS に関連したデータ利活用イニシアチブとして、2020年11月25日に欧州委員会が採択した「共通欧州データスペース」(CEDS、関連情報)がある。CEDSは、公的機関や企業、市民からのデータを、公益のために、安全かつ公平に使用できる単一のデータ市場を創設することを目的としており、表1に示すように、セクター/領域ベースに展開されている。
この中でEHDSは、保健医療に特化したCEDSの位置づけにある。そして、EHDSと関係の深いCEDSの1つに欧州オープンサイエンスクラウド(EOSC、関連情報)がある。
EOSCは、欧州委員会研究・イノベーション総局の「欧州研究領域(ERA)の2022-2024年政策アジェンダ」(関連情報)に基づく活動の一つであり、欧州におけるオープンサイエンスの実践を深めることを目的としている。EOSCは、科学コミュニティーと研究インフラストラクチャ全体の中で、以下のような方向性を目指している。
参考までに、保健医療の中でがん領域に特化したEOSCに、欧州がんオープンサイエンスクラウド(EOSC4Cancer、関連情報)がある。EOSC4Cancerは、EUの研究開発プログラム「ホライズンヨーロッパ」の助成金を受けたプロジェクト「データ駆動型がん研究を加速するための欧州全域基盤、関連情報)」のコンソーシアムである。EOSC4Cancerでは、スペインのバルセロナ・スーパーコンピューティングセンターと全欧バイオ情報基盤整備計画(ELIXIR)が調整役となり、欧州13カ国の29研究組織が参画してい他、英国マンチェスター大学が関連パートナーとして名を連ねている。
なお、EOSC4CancerやTEHDAS2に代表されるEHDS関連プロジェクトの多くは、EUの研究助成金を受けており、それらの成果物については、FAIR原則に準拠したオープンサイエンス/オープンデータ施策の一環として公開されることになる(関連情報)。
EHDS規則案には技術仕様に関する詳細な記述はなく、今後、TEHDAS2などの各種検証プロジェクトを通じて、ガイドラインや技術仕様書が整備される予定である。現時点では、共通欧州データスペース(CEDS)の「JRCデータスペースナレッジベース」(関連情報)に、共通の技術要件(例:ハイレベル要件、機能要件、非機能要件)が整理されており、これらを参照しながら保健医療分野固有の要件をみていくことになる。
JRCデータスペースナレッジベースは、以下のような構成になっている。
なお、共通欧州データベースでは、一からシステムを開発するのではなく、既存のコンポーネント/ビルディングブロックやリソースを再利用することを推奨している。
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