スズキの2024年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比0.8%増の161万6273台と2年ぶりに増加。日産自動車を約8万4000台上回るなど、ホンダに次ぐ3位が定着しつつある。生産の6割超を占めるインドは、マネサール工場で4月から新ラインの稼働を開始し能力増強したことや、中近東およびアフリカ向けの輸出の増加などにより同2.1%増と4年連続で増加。年度上期として過去最高を更新した。
ただ、インド販売は前年同期比3.1%減と4年ぶりに前年実績を下回った。その理由としてスズキ 社長の鈴木俊宏氏は生産体制の問題を挙げる。インドではSUV人気が高まる一方で小型車の販売が落ち込んでおり、「生産能力の問題で好調なSUVで(小型車の落ち込みを)カバーしきれなかった」と説明する。
インド以外の海外生産も前年同期比28.1%減と低迷している。これはハンガリーで前年が半導体不足解消で増産した反動減が表れた他、インドネシアが「キャリイ」の販売不振で減産したことが響いた。その結果、海外生産トータルでは同1.7%減の111万1848台と2年連続で減少した。
国内生産は好調で、前年同期比6.9%増の50万4425台と3年連続のプラス。8社の国内生産で最も高い伸び率だった。「スイフト」や「スペーシア」などの新型車が好調で、上期の国内販売でも、スペーシアが同40.1%増とN-BOXに次ぐ総合2位につけた他、「ワゴンR」や「ソリオ」など主力車種が2桁パーセント増を記録した。輸出も新型スイフト効果で同14.4%増と2年ぶりに増加し、国内生産を押し上げた。
好調なスズキも足元では伸び悩んでいる。9月のグローバル生産台数は、前年同月比10.2%減の26万4211台と4カ月連続のマイナス。8社の順位でも日産を9000台近く下回り4位となった。要因は海外生産で、インドは稼働日が少なかったことに加えて、記録的な大雨の影響で在庫調整なども実施したため同8.7%減と4カ月ぶりに減少した。さらにハンガリーで前年に実施した増産の反動が発生するなど、インド以外の海外も同31.7%減と大幅に減らし19カ月連続のマイナス。海外生産トータルでは同11.5%減の17万6304台と4カ月連続で前年実績を下回った。
国内生産も前年が半導体不足の改善で高い水準だった他、欧州向け「イグニス」の生産終了などにより、前年同期比7.5%減の8万7907台と2カ月連続のマイナスだった。ただ、輸出自体は新型スイフトやパキスタン向けCKD(セミノックダウン)の増加などにより、同10.5%増と2カ月ぶりに増加した。
国内外ともに低迷したのが日産だ。2024年度上期のグローバル生産台数は、前年同期比7.8%減の152万2501台と4年ぶりに前年実績を下回った。特に落ち込んだのが国内生産で、同13.4%減の30万7101台で4年ぶりのマイナス。国内量販車種の「セレナ」の販売が伸び悩んだことに加えて、北米向け「ローグ」が低迷。その結果、輸出も同12.7%減と大幅減となり、コロナ禍以来4年ぶりに減少した。
海外生産も、前年同期比6.4%減の122万5400台と3年連続の前年割れだった。主要市場の北米は、「キックス」「ヴァーサ」が増えたメキシコは同9.9%増と好調だったものの、米国は「アルティマ」が落ち込み同15.5%減と低迷した。中国も、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などにより、同8.6%減と4年連続のマイナス。ただ、落ち込み幅はトヨタやホンダに比べると1桁%減にとどめた。英国も「キャシュカイ」の減少により同7.5%減と3年ぶりに減少した。
足元では一層厳しさが増している。9月単月のグローバル生産は、前年同月比9.8%減の27万3342台と4カ月連続で前年実績を下回った。このうち海外生産は同9.3%減の21万4759台と4カ月連続のマイナス。中国は、同11.8%減と4カ月連続の減少。トヨタやホンダと比較しても減少幅は小さいといえる。英国も同19.9%減と振るわず、4カ月連続で減少した。
特に深刻なのが北米事業だ。メキシコは前年同月比15.9%増と2カ月連続で増加したが、米国はローグやアルティマなど主力モデルの販売が低迷し、同23.7%減と大きく落ち込み、5カ月連続のマイナスだった。米国で人気のHEVをラインアップしていないことが響いている。これを受けて年初まで好調だった国内生産が急減しており、同11.8%減の5万8583台と7カ月連続で減少。台風10号の影響による稼働停止も実施したが、主因は米国向けローグの減産で、輸出も同5.7%減と4カ月連続のマイナスだった。
なお、中国と北米事業の不振を受けて、日産は2024年4〜9月期の決算発表に合わせて大規模なリストラ策を公表した。26年度までに年間350万台レベルの販売台数でも株主還元や成長投資を継続できる収益構造を構築し、グローバルで生産能力を2割、人員を9000人削減する。2024年3月に公表した経営計画では、世界販売台数を26年度に23年度比100万台増となる455万台を掲げたものの、わずか8カ月で修正を余儀なくされる格好となった。
会見で日産自動車 社長の内田誠氏は「日産固有の課題として、販売計画を達成できていない状況が続いている。市場が急速に変化する中、計画がストレッチしすぎたものだったことは否定できない」と述べた。加えて「半導体不足で需給バランスが大きく崩れたため、インセンティブに頼らず販売できていた。市場が正常化して本来の競争環境が戻ってきて、コスト競争力やブランド力など課題が浮き彫りになった」(同氏)と改めて厳しい現状について説明した。
日産がトヨタやホンダと事情が異なる理由の一つとして、米国で需要が高まっているHEVを用意していないことが挙げられる。その結果、主力モデルであるローグやアルティマの販売低迷が深刻化し、インセンティブも高止まりしている。日産は米国事業のテコ入れとして、新型車やプラグインハイブリッド車(PHEV)の投入で挽回を目指す方針だが、以前から展開しているシリーズハイブリッド「e-POWER」の投入もいまだにできていないのが実情だ。さらに、トランプ次期大統領の外交政策や、市場の減速感も懸念されるなど、米国事業の先行きは不透明と言わざるを得ない状況だ。
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