実際に共通課題としてドイツとともにさまざまな共同プロジェクトを推進している。国際標準化や産業セキュリティ、産業データ連携についてはアクショングループでの活動を推進し、共同文書の発表なども進めている。
長くWG1で主査を務めた水上氏は「話し合いの中では、枠組みをしっかりと決めるドイツと、最終的な現場の調整でなんとかする日本の産業文化的な違いなどもあり、難しい場面も何度かあった。しかし、それぞれの考え方を説明することで、お互いに理解が深まり、新たな視点が生まれることもあった。内容以前のそれぞれの考え方や仕事の進め方への理解が重要だと感じた」と取り組みについて語っている。
これらの土台作りが進んだ中で、RRIはIoTによる製造ビジネス変革において、次にどのような取り組みを進めていくつもりなのだろうか。藤野氏は「RRIは基本的には実行団体ではないので、あくまでも枠組み作りで貢献していくことは変わらない。これまで10年間の取り組みで国際連携や情報発信への土台作りは進んだので、これらを生かしてデジタル時代にふさわしい製造業の在り方に向けて支援を進めていく」と語る。
その意味で、役割として期待されているのが、産業データスペースに向けての国際連携の動きや、そのための課題解決への取り組みだ。欧州では、自動車産業向けでサプライチェーン情報を連携するデータスペースとして「Catena-X」が進められているが、これを1つのきっかけとし、製造産業のあらゆる情報をデータスペース経由でやりとりできるようにする「Manufacturing-X」などの構想も進んでいる。
RRIではこれらの動きを把握し、課題などを明確化するために、WG1傘下に、2023年4月に「産業データ連携アクショングループ(AG)」を発足。3つのタスクフォース(TF)で活動を行っている。TF1は、Catena-Xなど欧州の先行事例のベンチマークを行い、欧州型産業データ連携の仕組みを明確化し、TF2では、産業データ連携による社会や環境価値や企業利益、懸念事項を明確化するためにユースケースを検討する。TF3では連携される産業データ間の意味的な相互運用性についての検討を行っている。2024年8月にはこれらの3つのTFの成果をまとめた活動報告書をリリースしている。
中島氏は「産業データを有効に活用するためにデータ連携を進めようとする動きは強まっている。しかし、国際的なデータ連携には、企業や業界、国家などのさまざまな条件が関係するために、なかなか枠組み作りがうまく進まない。特に日本企業はこうした動きが苦手だ。日本でもウラノス・エコシステムなどデータスペースの動きが生まれているが、欧州を中心に海外の取り組みを国内に紹介するとともに、国内での動きを発信していく。そして、連携の窓口としての役割を果たしていく」と今後の取り組みについて述べている。
RRIでは、これらのデータスペースへの取り組みも含めて活動を紹介するシンポジウム「ロボット革命・産業IoT国際シンポジウム2024〜Call for Action: 社会イノベーションに向けた製造変革〜」を2024年10月31日に開催予定としている。
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