AGV活用で二輪車組み立て工程を革新、ヤマハ発動機が進める生産DXとはITmedia Virtual EXPO 2024 夏(1/2 ページ)

アイティメディアは製造業向けの国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2024 夏」を開催。本稿では「AGVバイパス方式での二輪車組立工場革新〜ヤマハ発動機の生産DX〜」をテーマとしたヤマハ発動機 生産本部 製造技術統括部 組立技術部 部長の岡田祐介氏の基調講演の模様を紹介する。

» 2024年10月30日 08時00分 公開
[長町基MONOist]
ヤマハ発動機の岡田祐介氏

 アイティメディアは、2024年8月27日〜9月27日、製造業向けの国内最大級のオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2024 夏」を開催した。

 本稿ではその中から、「AGVバイパス方式での二輪車組立工場革新〜ヤマハ発動機の生産DX〜」をテーマとしたヤマハ発動機 生産本部 製造技術統括部 組立技術部 部長の岡田祐介氏の基調講演の模様を一部紹介する。

生産台数下降もモデル数はほぼ同等、多品種少量生産が拡大

 市場ニーズの多様化に伴い、二輪車の製造現場では多品種少量生産が広がっている。ただ、多品種少量生産はモデルごとの段取り作業や労働者の多能工化などが必要となり容易ではない。そこでヤマハ発動機では二輪車の組み立て工程に135台のAGV(自動搬送車)を用いた「AGVバイパス方式」を導入し、こうした課題に対応しようとしている。

 ヤマハ発動機はグローバルの開発、生産体制を整えており、現在180を超える国と地域で販売を行っている。岡田氏が所属する生産本部は商品の製造およびモノづくりの技術開発を行う他、事業横断でグローバルでの生産戦略を立案、推進し、経営効率の追求とコスト競争力を高めることに取り組んでいる。

 製品別でランドモビリティ事業本部、マリン事業本部、ソリューション事業本部があり、生産技術本部と生産本部、調達本部が連携してユーザーに満足してもらえる商品の提供を目指している。生産本部は生産戦略統括部と製造統括部、製造技術統括部に分かれており、生産本部の定めた「モノづくりVision2030」では「顧客に感動を与えるモノづくり」として、つながる価値、商品の価値、社会の価値、人材の価値という四つの価値を基軸にした活動を展開中だ。

 日本の本社工場(静岡県磐田市)では二輪車と自動車用エンジンを主に生産している。同社の二輪車の世界生産数は年間約479万台に上る。このうち本社工場では約4%の21万台を生産する。グローバルで生産比率が高いのはインドネシア29%、インド15%、ベトナム12%などで、アジアでの生産比率が高くなっている。

 日本からの出荷は欧州向け47%、北米向け27%、国内は5%で、高付加価値製品に絞って効率よく多品種少量生産を行う。本社工場の生産モデルとしてはFJR1300のような排気量1300ccクラスの大きなもの、R1をはじめとするスーパースポーツタイプの4気筒モデルなどがある。

 近年の二輪車の生産台数は2014年から下降気味だが、モデル数はほぼ変わらなく、ユーザーの多種多様な要望に対して生産現場がいかに応えていくかが課題となってきた。

カテゴリー専用ラインは需要変動で生産性悪化

 2019年当時は、本社工場内の2つの建屋で生産を行っており、それぞれの建屋で2本の組み立てラインと少量職場、完成検査、梱包職場を備えていた。

旧ラインでの二輪車の組み立ての模様[クリックで再生]

 その時の課題は2つあった。

 1つ目の課題は、当時のロットサイズ40台では、出荷台数が多いモデルは毎日生産する一方で、需要の少ないモデルは月1〜2回程度の生産となり、ユーザーの要望にタイムリーに応えられる生産、出荷ができていなかった点だ。

 2つ目の課題は、4つあったラインは、スポーツモデル系が2ライン、オフロード系モデルが1ライン、スクータークルーザー系が1ラインというカテゴリー別の生産をしており、時期によってモデルの需要が上下するとライン稼働がアンバランスとなり、生産性悪化の原因となっていた。

 そこで、ユーザーの要望にタイムリーに応えると同時に、カテゴリー別生産ラインの低稼働率改善を目指し、「小ロット生産で毎日出荷できる仕組みとシーズナリティの両立」(岡田氏)をコンセプトにした取り組みを始めた。

 そして、1つ目は流し方改革として出荷平準と市場追従性を目指した小ロットハイサイクル生産を、2つ目は作り方改革としてライン集約と超汎用ライン、段取り改革、双子ラインによるブリッジ生産をテーマにした。

 これら2つの改革を実現するために、AGVバイパスライン(組み立て工数にあったライン長)、工数合致の工程設計(1工程の工数は一定)、機種切り替え工数ゼロ(AGVと設備の情報連携)、双子ライン(設備仕様/レイアウト統一、同一設定/全モデル対応ラインの構築)という4つの技術革新を取り入れた。

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