Autodesk プラットフォームがもたらす製造の未来 DXからAI、サステナブルまでAutodesk University 2024レポート(1/2 ページ)

米Autodesk(オートデスク)は、年次カンファレンス「Autodesk University 2024」を米国カリフォルニア州サンディエゴで開催した。同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏らが登壇した初日の基調講演の模様をレポートする。

» 2024年10月18日 06時00分 公開
[鈴木恭子MONOist]

 米Autodesk(オートデスク)は、年次カンファレンス「Autodesk University 2024」(以下、AU 2024)を、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催した(現地時間:2024年10月15〜17日)。AU 2024は建築/土木/エンジニアリング/建設、製造、メディア&エンターテインメント領域のユーザーが一堂に会する同社最大級のイベントで、世界中から1万2000人以上のユーザーやパートナーが集結する。今回は日本からも約270人が参加し、参加者人数は過去最高となった。期間中は650を超えるトレーニングセッションが開催され、参加者同士の人脈を広げる30以上のネットワーキング機会なども提供された。

「Autodesk University 2024」のメインステージと会場の様子 「Autodesk University 2024」のメインステージと会場の様子[クリックで拡大]

 近年、Autodeskは「Design&Make(デザインと創造)」をコンセプトに掲げ、各領域に対してツール提供を行う従来のビジネスモデルから、製品設計から製造までのプロセスを包括的にサポートするプラットフォームカンパニーへと軸足を移している。会期初日(同年10月15日)の基調講演では、同社 社長 兼 CEO(最高経営責任者)のAndrew Anagnost(アンドリュー・アナグノスト)氏と、同社 上級副社長 兼 CTO(最高技術責任者)のRaji Arasu(ラジ・アラス)氏が登壇。「Autodesk プラットフォーム」に組み込まれているAI(人工知能)を活用した機能やテクノロジー、これらを総称した「Autodesk AI」の最新の開発状況などについて語った。

AU 2024の会場となった「San Diego Convention Center」 AU 2024の会場となった「San Diego Convention Center」[クリックで拡大]

新データモデルAPIで設計プロセスの効率化とDXを加速

 冒頭、アナグノスト氏は「新技術には常にハイプ(誇大宣伝)が伴い、その有用性が実証されるまで時間を要する。現在の生成AIブームがまさにそれであり、今後は淘汰(とうた)が始まる。われわれはAI主導の設計/製造ソリューションによる効率化と収益性向上を実現すべく、AIやデータ設計の開発を加速させている」と近年の生成AIブームと同社のスタンスについて言及した。

Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏 Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏

 生成AIは、製造業や建設業でも設計/製造プロセスの効率化をもたらす“ブレイクスルーツール”になり得ると期待されている。しかし、そこには複数の課題も存在する。その1つがデータの扱いだ。AIモデルの精度向上には質の高い大量のデータが必須となるが、設計/製造データの収集や標準化が困難な場合が多い。また、製造データや設計情報などは機密性が高く「どのデータを学習データとして利用するか」の判断も難しい。

 この点についてアナグノスト氏は、「AIを日常的なプロセスに適用するためには、AIによるデータ活用を前提としたデータ構造化が不可欠だ」と指摘し、データの整理とアクセス性向上に注力していることを明らかにした。

 同社は現在、AECO(建築/エンジニアリング/建設/運用)向けの「Autodesk Forma」、製造向けの「Autodesk Fusion」、メディア&エンターテインメント向けの「Autodesk Flow」といったインダストリークラウドを構築し、業界に特化したワークフロー管理やコラボレーション機能を提供している。その基盤となるのがAutodesk プラットフォームであり、同プラットフォームが“設計データのハブ”として機能するという。

「Autodesk プラットフォーム」の概要。プラットフォーム上にデータモデルがあり、その上に各インダストリークラウドがある 「Autodesk プラットフォーム」の概要。プラットフォーム上にデータモデルがあり、その上に各インダストリークラウドがある[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 2023年に同社は製造業とAEC(建築、エンジニアリング、建設)業界向けの新たなデータモデルAPI(Application Programming Interface)を発表した。同APIを利用すれば、従来の一体型ファイル構造ではなく、複数モデルの同時検索や設計バージョン間の変更比較、過去のプロジェクトデータの深掘りといったことが可能になる。アナグノスト氏は「こうしたアプローチはAIを活用した新たな価値創出だけでなく、設計プロセスの効率化とデータ活用の柔軟性を大幅に向上させ、業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させる重要な一歩になる」と力説した。

 さらにアナグノスト氏は、現在取り組んでいる3D形状生成のAI「Project Bernini」も紹介した。Project Berniniは、設計および製造業界向けの生成AI開発を目的とした研究プロジェクトだ。具体的には、手書きのスケッチやテキスト、3次元画素(ボクセル)などのプロンプトを入力すると、実際のジオメトリを合成し、機能的な3D形状を迅速に生成する。アナグノスト氏は「Project Berniniはまだ研究レベルだが、実用化すれば概念設計フェーズで大幅な時間短縮が見込める」と述べた。

「Project Bernini」について 「Project Bernini」は手書きのスケッチやテキスト、3次元画素(ボクセル)などのプロンプトから3D形状を迅速に生成する。ただし現時点では“機能的”とはいえないデザインを提示することも多く、さらなるブラッシュアップが期待される[クリックで拡大]
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