前述のようにサービスロボットに対する「需要の高まり」と「市場の拡大」が進んできたことで、サービス業の現場でロボットが活躍する準備が整ったと考えられる。
では実際に現場に導入されているロボットにはどういったものがあるだろうか。ユーザー企業、メーカー企業と会話の中で、先ほども述べたような掃除やモノの運搬といった単純作業を代替してくれる「道具」としてのロボットは導入しているが、業務に組み込まれ、業務をサポートしてくれるような「相棒」としてのロボットはまだ導入できていない/そもそも見当たらないといった話が聞かれる(図2)。
では、「相棒」としてのロボットとは何だろうか。
昨今さまざまなヒューマノイドロボットが登場している。物流現場を想定した実証実験や、調理した料理を厨房(ちゅうぼう)で受け取り、客席のテーブルに置くなどロボットハンドを用いてサービス業務における最終工程まで自動化することを目指した製品の開発など、実用性を兼ね備えた労働力としてヒューマノイドロボットが取り上げられることがある。サービス業の現場ではこのようなヒューマノイドロボットが求められているのだろうか。
日々のコンサルティングサービスを提供する中で見える実情としては、技術発展が進んだヒューマノイドロボットのような究極的なロボットを実現すること以上に、いかにロボットがサービス業の現場に馴染むかが課題だと考えている。
ではサービス業の現場に馴染ませるにはどうしたらよいのだろうか。解決策の話に移る前に、今回は製造業とサービス業の違いにも触れながらサービスロボット導入の障壁について解説する。
まず、製造業とサービス業でのロボット導入検討の様子からうかがえる、サービス業の3つの特徴について解説する。
まず1つ目の特徴は「在庫化ができない」という点である。サービスというのは基本的に物体としての実体がなく、行為や活動によって提供される。そのため、製造業のように製作した製品を保管するといった物理的な意味での在庫化ができない。
続いて2つ目の特徴は「生産と消費が同時に発生する」という点だ。サービス業は顧客からの要望を受け、サービスを提供し、顧客に満足してもらうという一連の流れの中で、生産と消費を同時に行っている。一方で製造業は「在庫化」ができるというところから、生産タイミングと消費タイミングをずらすことができる。
3つ目の特徴は「標準化しきれない」という点になる。サービス業では、現場でのマニュアルは踏襲しつつも従事者それぞれで微妙なサービスの違いが生まれたり、また顧客においても同じサービスを提供してもそれぞれ満足度が異なったりと、提供する側、享受する側の感覚に依存する部分があるため標準化が難しく、品質が変動するという特徴がある。
具体的には、ホテルのロビーでチェックイン待ちをする際、ウエルカムドリンクなどでおもてなしをすることで顧客は待っているとは感じず、それを満足度の高い体験として位置付けることができる。製造業的な発想で言えば、スループットを意識し、チェックイン時間の短縮に注目するが、サービス業においては、おもてなしをなくした分、数分チェックイン時間を早めたところで、顧客満足度が上がるとは限らない。
これら3つの特徴から言えるのは、製造業では「計画的生産」ができ「物質が品質を担保」するのに対し、サービス業では「都度生産」となり「体験が品質を担保」するということである(図3)。
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