洗い出した結果を大きな項目として図2に示します。
筆者は、運営、販売、製造、会計、外部要因の5つに分割して異常系を考えることとしました。
大項目の中の詳細な異常系をまとめた結果を図3に示します。
上記では、例えば、「不良品を作った場合」「火傷をする」といった場合も考察しています。実際の「たこ焼き模擬店」の運営では、「異常系は、あらかじめ対処法は決めず、実際に発生してから、常識と良識で臨機応変に(あるいは、テキトーに)対応する」ことになるでしょう。
正常ケースでも、日常生活では、毎日、毎時、毎分、細かい判断をしています。朝起きて学校へ行くまで「目覚まし時計が鳴って、あと1分だけ寝ていようか?」「どのシャツを着ようか?」「歯磨きは十分か?」「髪形は見苦しくないか?」「バスの時間が迫っているので、走ろうか?」「前から来る歩行者を右に避けるか、左に避けるか?」「この地下鉄の車両は満員なので、隣の車両から乗ろうか?」など、無意識のうちに大量の判断をしています。プログラミングでは、この全ての判断を考慮しなければなりません。異常が発生した場合も同様です。そう考えると、朝、起床して学校へ行くのは、簡単に思えますが、実は、おびただしい数の判断を下しているのです。
文化祭での模擬店とはいえ、さまざまな異常系を考える必要がありますね。具体的な対応策は、次回以降で検討します。
今回は、異常系を考察する上でのポイントと、たこ焼き模擬店を題材として、もう一歩進めた異常系を洗い出しました。
異常系を考えるとキリがありませんが、コンピュータは、プログラミングした通りにしか動作せず、臨機応変に動作しません。今回は、階層構造で異常系を洗い出す方法を紹介しました。たかが文化祭の模擬店とはいえ、学生さんは、想定外の事象に直面しても、臨機応変に対応していて素晴らしいと思います。
なお、階層構造で異常系を考える方法は、FTA(Fault Tree Analysis)でも応用しているので、興味がある人は調べてもよいでしょう。
次回は、洗い出した異常系を分析し、対策するか/諦めるかを考察します。
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東海大学 大学院 組込み技術研究科 非常勤講師(工学博士)
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