複合材3Dプリンタを活用した新しい設計のアイデア複合材料と3Dプリンタのこれまでとこれから(4)(1/3 ページ)

東京工業大学 教授/Todo Meta Composites 代表社員の轟章氏が、複合材料と複合材料に対応する3Dプリンタの動向について解説する本連載。今回は、複合材3Dプリンタを活用した新しい設計のアイデアに関する初級の内容について解説します。

» 2024年08月29日 08時30分 公開

 複合材を成形可能な3Dプリンタとその最先端研究についてこれまで解説してきました。ここからは、複合材3Dプリンタを活用した新しい設計のアイデアについて解説していきたいと思います。今回は、複合材3Dプリンタを活用した新しい設計の初級編です。それほど難しくなく、直観的に分かる内容だと思います。本稿に続く連載の第5回、第6回では、中級編、上級編といった形で、複合材3Dプリンタを活用したより高度な新しい設計を紹介する予定です。

スナップインサンドイッチ構造

 最初に紹介する構造はスナップインサンドイッチ構造です。図1がその構造です。六角形のハニカムコアサンドイッチ構造と同じようなものですが、片面のコア部分が凸構造で別の面が凹構造になっています。これを3Dプリントして、連続繊維のスキン材と一体作成することによって、はめ合わせるだけで剛性が非常に大きくなるサンドイッチ構造を作ることができます。

図1 凸構造と凹構造のコア材を持つスナップインサンドイッチ構造 図1 凸構造と凹構造のコア材を持つスナップインサンドイッチ構造[クリックで拡大]
スナップインサンドイッチ構造[クリックで再生]

 図1は、従来の機械構造にあるハニカムコアサンドイッチ構造を、簡単にはめ込み式で作れるようにしたものです。こういった発想は比較的簡単にできますので初心者向けですね。はめ込みをきつく作っておくと、はめ込んだだけでも取れにくくなります。もしも、分解できなくても良い製品であれば、イカリの形状のものと穴を片面ずつに作成して、はめ込みをしてしまうことで取れなくなります。

 こういう形状ですと、せっかく2つの部品に分離しているので、コア内部に何かを仕込んでから組み立てたくなります。それは連載第5回の中級編で説明いたします。

 これは、従来もある製品を3Dプリンタで作りやすくしたものです。複合材3Dプリンタを活用した新しい設計のアイデアの手前にあるもので、初級編のレベルに達していないかもしれません。

スナップインサンドイッチ構造作製の応用

 機械加工では、厚板から削り出すか、溶接などを使うことになるので、図1のような構造を作製するための加工は大変です。それでは、これを応用した新しい設計のアイデアの例を示ししましょう。3Dプリンタでは、図1のように表面に凹凸を作ることは簡単にできます。この表面の凹凸を利用した設計がスナップイン継手(スナップインファスナー)です。これを図2に示します。

図2 スナップイン継手 図2 スナップイン継手[クリックで拡大]

 これは、3Dプリントした2枚の板をつなぐ仕組みです。右側の図が横から見た図になりますが、表面に凹凸があり、それが2枚の板でかみ合っています。これを半円のリベットのようなもので接続しています。表面が黒くて分かりづらいので、3DCADに色を付けた模式図で説明します。

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